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グラハム・ハンコック氏

平成19年(2007年)2月15日8面

ジャーナリスト・作家   グラハム・ハンコック氏に聞く
   世界各地の遺跡を踏査し、未知の古代文明の謎を追い続けてきたグラハム・ハンコック氏。二十七ヵ国語に訳され、五百万部を超える世界的ベストセラーとなった『神々の指紋』から約十年、同氏は新著『スーパーナチュラル』(未邦訳)で、探究のテーマを「意識」や「異次元」の問題に転換し、人間存在の本質にさらに奥深く踏み込んでいる。高度な科学技術や物質的に豊かな生活を謳歌する一方、スピリチュアルな領域との関係を失いつつある現代人は、いかにしてそのつながりを回復することができるのか――。昨秋の来日講演のDVDが先ごろ発売されたハンコック氏にインタビューした。   (聞き手=高橋由香里)


■人間存在を根本から問い直す新たな探究へ
長い間、私の主要な関心は、人類史から失われた高度な古代文明が存在していた可能性を明らかにし、その証拠を提示することでした。私は十七年にわたって世界中の遺跡で調査を行ない、数々の著書を発表しました。そして二〇〇二年、各地の海底遺跡を五百回以上ダイビングした調査結果をまとめた『神々の世界アンダーワールド』を出版した後、この分野ではできる限りのことをし尽くしたと判断しました。そこで、古代文明からさらに人類の起源にさかのぼり、われわれの存在とは何か、死後にはどうなるのか、といった以前から関心を持っていたテーマを探究することにしたのです。そこから生まれたのが新著『スーパーナチュラル』です。
■超自然的体験を経て真の「人間」となった祖先
この本の中心となるのは、人間の意識やシャーマニズム、異次元の問題です。こうしたテーマを追う中で、私は人類の祖先に、三万五千〜四万年前ごろ革新的な変化が起こったという事実に行き当たりました。数百万年もの間、単調な生活を営んできた人類が、突然示し合わせたように各地で文化や芸術のようなものを生み出したり、死者の埋葬に副葬品を一緒に埋めたりするなど、人間らしい行動が見られるようになった。私たちの祖先は何らかの超自然的、あるいは異次元の体験をし、その中で得たイメージを洞窟の壁に描きました。現実とは異なるもう一つの次元の存在を認識したその時が、人類の祖先が本当の意味で人間となった瞬間です。
■科学では解明できない次元の存在を知るために
 長年古代文明の調査を行なう中で分かってきたことは、私たちは霊的な世界をも含む多次元的な宇宙を生きているということです。
   古代人たちは異次元世界を直接的に体験し、それをさまざまな方法で表現しました。しかし、現代の科学的な器具によっては、そうした異次元の存在を解明することはできません。なぜなら科学的な器具は物質世界を探究する目的で作られているからです。けれども科学によっては知り得ない別の次元は確かに存在しています。それを知るために必要なことは意識のレベルを変えることです。
■脳と意識の関係
西洋的な科学に基づく見方では、意識は脳によって生み出され、肉体の死とともに消滅すると考えられています。しかし古代エジプトやチベット仏教のように、意識は独立したものとして存在し、脳はその乗り物、あるいは受信器のようなもので、肉体が滅びても存在し続けるという別の可能性も考えられます。
   このようにとらえるならば、あたかもテレビがさまざまなチャンネルの電波を受信するように、私たちも脳の受信器の波長を変えることで異なるレベルの意識を感受することができる。現代人は通常、一つのチャンネルだけに意識の焦点を合わせていますが、実際には私たちが気づいていない数多くのチャンネルが存在しているのです。
■意識の状態を変容させる技法を持つシャーマン
部族社会のシャーマンたちは、マヤやインカ、エジプトなど古代文明の聖職者と同様、異次元を経験するために意識を変容させる熟達した技法を持っています。例えば、南米のシャーマンには一万年以上前から「アヤワスカ」と呼ばれる飲料が伝えられています。アヤワスカは幻覚性の植物混合液で、その使用は南米諸国では法的にも保護されていますが、これを用いることで意識の状態が変化し、私たちが通常感知していない異次元にアクセスすることが可能になります。

■エジプトとチベットの『死者の書』の類似性
世界各地のシャーマンと対話を重ねるうちに、私は人類の祖先が洞窟の壁に描いたのと同じイメージを彼らが見ていることを知りました。つまり、変性意識状態の間に得る経験は普遍的なものといえるのです。
   例えば、エジプトやチベットの『死者の書』を書いた人々は、死後の世界について詳細かつ体系的に描写したガイドブックのようなものをつくりました。人間が死後、どのような現実に直面しても、恐れたり困惑したりすることがないように準備をしていたのです。これらの文書は、時代や地域を隔てているにもかかわらず、非常に多くの類似点があります。それは偶然の一致ではなく、『死者の書』をつくった人々が異次元で直接経験したことを描いているためです。
■シャーマン的な霊的体験をしていた宗祖たち
今日の主要な宗教のほとんどすべてにおいて、その原型にはシャーマニズムがあります。モーゼも、イエスも、ムハンマドも仏陀も、シャーマンのような霊的体験をしています。しかし、そうした宗教の中には、後に官僚化し、現世的な権力の根源となって、個人が宗祖と同じような体験をすることの妨げとなっているものもあります。私は直接的な霊的体験は人間にとってきわめて重要であり、健全な社会を築く上でも不可欠であると考えています。
■スピリチュアルな世界に開かれた日本人
私は過去十年の間に二十五回ほど来日していますが、日本は高度な科学技術や物質主義的な側面もある一方、その精神文化はいまだに強い力を保っていると思います。日本には人間の霊的な部分を重んじる古来の伝統があります。自然のあらゆる存在にスピリットが宿ると考える神道と、心の本質の探究を行なう仏教が生活の中に深く根ざしている日本人は、先進国の中でも世界に向けて新たな道を指し示す大きな可能性を持っている国だと私は思います。
■霊的な領域とのつながりを回復するために
現代社会は今、霊的な領域とのつながりを失う危機に直面しています。各地で悲惨な暴力がまん延し、争いが絶えず、環境破壊も急速に進んでいます。このことは、特に先進諸国の人々が霊的な世界との関係を失ってしまったことに起因しています。私たちがこのまま異次元の存在を否定し続ければ、現代社会は誤った方向に進んでいくことになるでしょう。私たちは物質世界のみならず、霊的世界も包含する現実を全体的にとらえる必要があります。そのためには、世界各地のシャーマンや、古代文明が残した文書の知恵から謙虚に学ぶことが大切です。
   現代人の多くは、物質主義的な価値観によっては真の幸福を得ることはできないという不安感を抱き、精神面で満たされることを望んでいます。私は、こうしたスピリチュアルな充足を求め、霊的な領域とのつながりを取り戻すことを望む人々の強い要求が、世界をより良い方向へと導くと確信しています。


グラハム・ハンコック氏= 一九五〇年、英国エジンバラ生まれ。ダラム大学卒。『エコノミスト』誌東アフリカ特派員を務めた後、古代文明の謎を解明する数々の著書を執筆。近著にエハン・デラヴィ氏との対談集『人類の発祥、神々の叡智、文明の創造、すべての起源は「異次元」にあった』(徳間書店刊)、DVD作品に同氏との対談「失われたアークの謎」(定価四、八〇〇円)、昨年十一月に潟gータルヘルスデザインの主催で実施された来日講演と日本各地の聖地を訪ねた映像を収録した「Supernatural〜異次元との遭遇」(定価五、八〇〇円)、ともに販売は同社=電話(〇一二〇)一五一八四六。
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このページの最終更新日 2007年2月27日