■初めての海外巡回展にあたり、どのようなご期待をお持ちですか。
真聰苑主開祖・伊藤真乗の生誕百年を迎えたことを機に、今まで国内で作品の展覧会をしてまいりました。これからは日本にとどまらず、まずニューヨーク、そしてシカゴ、ロサンゼルスと米国で開催し、ヨーロッパへと巡回いたします。
真乗は仏教者ですので、創作されたものは、信仰を根本になされたものといえましょう。今回は、宗教や言語、民族、国境などの枠を超えたところで、彫刻、篆刻、写真、どの分野でも、ご来場の方々に理解していただけるものがあればと思います。そして、作品を通して、「人々の幸せ」を願った教主の心が伝わればありがたいです。こうして大勢の方が見に来てくださり、大変うれしく思っております。
■オープニング当日の「済摂会」は、アメリカのキリスト教会では初めての法要ですね。
真聰苑主今回の済摂会は、カトリックの聖ペトロ教会が私どもの法要を受け入れてくださり、とても感謝しております。宗教を信ずる者同士、お互いに尊重し合い、手を取り合い、平和に向かっていくことが大切ですね。過去の亡き方々を廻向するとともに、今生きている私たちが未来に向かって希望ある幸せな世界を築いていくための一歩になればと念願しております。
四十一年前、開祖と霊祖(真乗教主の妻・摂受心院)が「欧州宗教交流国際親善使節団」として八ヵ国を訪問し、バチカンではローマ教皇様とお会いして、「ともに世界の平和を祈りましょう」と誓った、その願いを継ぐ歩みが一つかなえられたかな、と。宗教や宗派の枠を超えて、その人、その人に合った方法で自他の幸福を求めていくことで、平和な世界に近づいていけばよいと考えています。
■作品も、そして宗教的実践においても、真乗教主は伝統と現代性を融合された方ですね。
真聰苑主教主には常にチャレンジ精神がありました。若き日は航空技術者でしたが、宗教専従の道に入り、京都の醍醐寺(真言宗醍醐派総本山)で得度し、真言密教を修めた後、出家も在家も、男性も女性も同じように悟り、救われるようにとの念願から真如苑を創始しました。今の時代に合った宗教を通して人々が幸せになり、心の豊かさや優しさが生まれたら、というのが開祖と霊祖の願いでした。そのために、いわゆる仏教的な法衣を脱いで洋装で、現代的な法要も修めるというように、教主は伝統を重んじる一方で、さまざまな革新を行なった開拓者であると思います。
■真乗教主の作品をどのようにご覧になっていますか。
真聰苑主今から五十年前、私は高校生でしたが、父が真冬に小さなアトリエで新しい道場の本尊とするために涅槃像を謹刻している姿を毎日見に行きました。冷たい風が吹く中、父には昼も夜もありませんでした。手は粘土と石膏であかぎれになっていましたが、それでも作り続けていました。真乗にとって作品の制作は、宗教的な修行でもあったのです。
教主の作った仏像には、皆それぞれ心の中に仏がある、仏は人を優しく温かくしていく、そうであれば互いに合掌し、平和な世界をつくってほしいというメッセージが込められています。そして、おそらく真乗には、仏の慈悲は、たとえばキリスト教の神の愛にも通ずる、普遍的な救済というべきものがあるということを、仏像を作りながら感じていたのではないかと思います。
■教苑の活動指針として、「融和」ということを強調されていますね。
真聰苑主融和というのはお互いがお互いを理解し尊重しようとするところに生まれることだと思います。そのための媒体となるものはたくさんあります。言葉もそうですね。今は自分の主張をしていく時代ですが、一方的にではなく、相手の人や国の立場や主張を理解し合うところに融和が生まれます。今回の巡回展も、その一つかと思います。
融和していくことができたならば、争いはなくなりますね。融和とは、「とけ合う」ということですから、平等の感覚といいますか、人間は皆それぞれでも、心の基盤は共通だと思うのです。その心で、身近なところから、そして世界の人々とも融和を図っていきたいと願っております。
(NY展は三十日まで)