■神道系の大学として国学院が果たすべき使命とは何でしょうか。
本学は学則の中で「神道精神」に基づき人格を陶冶することを宣言しています。神道精神とは分かりやすく言えばお祭りの精神、つまり共同体への奉仕の精神と私は理解しています。昨今、自己の利益ばかり追求して、他人のことはどうでもよいというような風潮がありますが、それでは世の中良くならない。「自分を犠牲にしてでも共同体のために尽くす」という心構えも重要なのではないでしょうか。
国学院は常に「日本への貢献」を志してきました。日本を学び、その上で世界に羽ばたくような学生を育てたい。本学は神職の養成も重要な責務でありますが、祭りの意義を説明できる神職、時代に適応する神職を育てたいと思っています。
■再開発の完成で、神道教育に何か変化はありますか。
「神道を中心とした日本文化の究明」を象徴する施設、学術メディアセンター棟が完成しました。図書館や情報センター、研究開発推進機構、伝統文化リサーチセンター資料館が配置されています。神道文化や考古学を主体とした資料館ができたことで、神道を中心とした日本の文化や歴史を可視的に学べるようになった点が大きな変化ではないでしょうか。
■文科省の二十一世紀COEプログラムに採択されるなど、国学院の神道研究がますます盛んになってきた印象を受けますが。
本学は平成十四年にCOE「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」に採択され、平成十九年三月に終了しました。プログラムの終了後も拠点形成のための研究教育事業を継承・発展させることが課題でしたが、十九年に発足した研究開発推進機構がその役目を担っています。
また、同じ年に「モノと心に学ぶ伝統の知恵と実践」が文科省の私立大学学術研究高度化推進事業(オープンリサーチセンター〈ORC〉整備事業)に選定されました。これは、日本の伝統文化がはぐくんだ知恵と実践の社会的意義を、さまざまな「資料」(モノ)とその背景にある「心」を抽出することで明らかにするのが目的です。学術メディアセンター棟でその研究成果を公開していきます。
■神社界と連携した動きはありますか。
伊勢神宮の式年遷宮が平成二十五年に控えていますが、大学としては奉賛金などの形で遷宮に協力していきます。教員と学生が一体となった動きとしては、神楽舞のサークル「千早会」や柔道部が、神社界の支援を受けながら皇居お濠(ほり)の水質浄化促進運動を計画しています。お濠は全国的に見ても最も汚染が進んだ水質の一つなんですね。現在、署名運動を行ない、東京都・環境省・宮内庁などに働き掛けていきたいと考えています。
■平成二十一年度に「人間開発学部」が発足しましたが、その意図は何ですか。
本学部には初等教育学科と健康体育学科が設置されていますが、やはり神道精神を規範としています。本学は「教職の国学院」ともいわれてきました。教員養成課程を、初等教育に携わる教員育成まで伸ばした形です。また、高齢化社会を迎え、健康をどうするかが非常に重要になっています。健康の分野から、日本の国や国民を良くしていくということが大いに期待されています。
■大学の展望は。
少子化進行で今、大学は非常に厳しい時代です。多くの大学が学生集めに苦労されている。本学も切磋琢磨(せっさたくま)し、新学部・新学科の設置も含めて考えたいと思っています。「新建物が完成し、都内にあるから本学は安心」という思いでいると、生き残れない時代であることは確実です。