|
<<ホーム>> |
|
| 時感断想 − 第11回 |
1、 積極的な発信を 「仏教が好き」に応えて |
||
|
|
私立大学の学長を務めていると、どうしても大学の安定と発展の指標となる学生数、とくに入学定員の確保に関心と注意が向かざるを得ない。仏教と社会福祉の二学科制をとっている本学も例外ではなく、十月の推薦入試に始まり、一般入試が終了する三月までの半年あまりは、受験者数と入学者数の増減に一喜一憂することになる。幸いにして入試・広報部教職員の地道な努力が次第に功を奏し、ここ数年は順調に定員数を充足している。 人文科学系の二学科のうち、本年度より仏教福祉学科から内容を拡大充実して社会福祉学科とした新学科は、予想以上の反響があって学生数も増加した。これに対し、伝統的分野である仏教学科は、宗門後継者と呼ばれる真言宗寺院の子弟を中心に数十人の枠を確保しているとはいえ、近年少し気になるのは、一般の家庭から仏教学科を受験する学生数が伸び悩み、若干ではあるが下降線をたどっていることだ。この傾向は本学に限らず、他の仏教系、さらには宗教系大学・短期大学にも共通して見られるという。 近著では、日本文化の基層を形成してきた仏教の魅力を、思想、実践行、儀礼、芸術などの広くて深い視点から再確認しようとする河合隼雄・中沢新一両氏の対談集『仏教が好き!』(朝日新聞社、二〇〇三年)などが好評を博している。しかし、現実社会の現象面においては、不透明に続く構造的経済不況や一部の原理主義的教団の暴走などによる漠然とした恐怖感や不信感もあって、いわゆる「宗教忌避」「宗教離れ」が想像以上に進行していることも否定できない。 その事実をふまえた上で、既成の仏教教団や寺院、関連する大学等に求められていることは、自己解脱や各宗派の祖師に対する信仰、ならびに故人・先祖への供養などの多岐多様な側面を備える複合的(重層的)構造を持った日本仏教の積極的意義の発信である。 さらには伝統や現状の追認にとどまらない、より普遍的、かつ他者や社会をも視程に入れた現代的共生の論理を議論し、提案し続けていくことが、われわれ仏教者が、社会の「仏教が好き」の声に応え、人びとの関心の裾野を拡大していくための必須要件だと認識している。 |
||
|
|||
中外日報のホームページに記載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
著作権は『中外日報社』に帰属します。Copyright2005,Chugainippoh
このページの最終更新日