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| 時感断想 − 第55回 |
1、 濃密な時間 「少欲知足」切り口多彩 |
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今春、大阪の「北御堂」で、作家の玄侑宗久氏と文化人類学者の上田紀行氏と私による公開鼎談があった。テーマは「少欲知足」であったが、「仏教講座」ではなく一般的な「公開講座」なので、あまり仏教に特化せず、現代社会を生きる人たちに何かヒントになるものを語ろうという企画だった。「北御堂」はオフィス街の真ん中にあるので、企画サイドとしては、都市に働く人たちへと関わり、ご縁を結びたいという意図である。 現代人は常に「自分を確立せよ」というメッセージを受け続けて暮らしていると思う。さまざまな場面で自己決定が求められ、自己主張ができる人間でなければならないといった傾向が強くなっている。しかし一方で、仏教が説くように「自分というものが強ければ強いほど、苦悩も強くなる」のが人間のメカニズムである。これでは相反する二方向に引っ張られ続けていることになる。 現代人は、自分が別々の方向へと分裂するような苦悩に立ちすくんでいるのではないだろうか。「少欲知足」とは、自らの有り様を見つめなおすことを前提としている言葉である。と、まあ、そんな話を私は語ってみた。 玄侑氏は、「家にテレビを置かないとか、携帯電話を持たないとか、ETCをつけないとか、とにかく『できるけどやらない』といった自らの選択を大切にする」などと、意外な方向から具体的かつユニークな視点を矢継ぎ早に提示する。聴衆は玄侑ワールドに魅了されたことだろう。 また、日本仏教に期待と批判を表明する稀有な学者である上田氏は、ダライ・ラマ十四世の言葉を引用し「欲があることは問題じゃない。どんな人にも欲望はある。小さな欲望にとらわれず、大欲を持つのだ。社会貢献や大きな慈悲の心といった大欲を持てば、小さな欲望に引きずられない」と語った。 いずれも示唆に富むメッセージで、予定時間はあっという間に過ぎてしまった。まったく打ち合わせ通りには進まなかったのだが、とても濃密な時間であった。 |
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このページの最終更新日
2009年06月24日