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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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宗教的生活の実践でライフスタイル変革

2008年6月10日付 中外日報(社説)

G8洞爺湖サミットの関連閣僚会合の一つとして、神戸市で環境大臣会合が五月二十四日から二十六日まで開催された。会合では「気候変動」「生物多様性」「3R」の三つの議題が取り上げられた。

気候変動は今さら説明するまでもないが、温室効果ガス排出削減、「低炭素社会の実現」のため、ライフスタイル、社会インフラなどの改革が課題として挙げられた。「生物多様性」というテーマに関しては、単に絶滅危惧種の保護という観点を超えて、それが「人間の安全保障の根源」にかかわる問題であり、生物多様性の損失が社会的不平等や不安定を助長する、と「議長総括」で指摘されている。

「3R」は四年前のG8シーアイランドサミットで提唱されたもので、リデュース(廃棄物抑制)、リユース(再利用)、リサイクル(再資源化)の三つのRを指す。これに関しては二酸化炭素排出削減と同じく国や社会全体のみならず、個々人のレベルで日常生活の在り方そのものの見直しが強く迫られている。

かつて、日本の高度成長期には「消費は美徳」という言葉が誇らしげに語られた。すでに歴史の彼方のお話のようだが、まだそれからせいぜい半世紀がたったにすぎない。このわずかな間に、日本は世界とともに環境破壊、資源枯渇の終末的展望に直面することになったわけである。

とはいいつつ、低迷する景気の浮揚のためには、生産・消費の拡大が説かれる側面はあるし、ガソリン高騰が社会問題化しながら、金科玉条として道路建設の財源確保を唱える政治家もいる。足元を顧みれば、われわれ自身からして、どれほど自覚的に生活を変えているか疑問を持つことも多い。

さらに、温室効果ガス排出削減割り当ての問題などでは国家エゴが露骨な対立を見せ、日暮れて道遠しを思わせる。一方で、保有国が現有核兵器をすべて使えば全世界を何十回でも破壊することができるという現実もある。地球の時間を一日二十四時間に換算すると、そのうちわずか十秒にも満たない人類の歴史の危うさを考えるべきである。

ところで、宗教界でも環境問題への取り組みは早くから行なわれている。比較的規模の大きな運動としては、曹洞宗のグリーン・プランや新日本宗教団体連合会(新宗連)の電力ダイエット運動などを例として挙げることができよう。

「米を淘(よなぐ)るに、水は是れ身命なりと知る」という道元禅師の『典座教訓』や、僧堂の流しの下に雀は来ない、と言い習わされることなどからも明らかなように、そもそも、仏道修行者の生き方自体に、今日の環境問題の観点からは理想に近い姿が示されている、と言ってもよかろう。

「共生」とか「おかげさま」など宗門の教化活動の理念を見ても、環境の時代に説得力を持つものが多い。特定の宗教とは関係ないが、宗教的美徳にもつながる「もったいない」という日本語がワンガリ・マータイ氏によってスポットを浴びたことに、わが意を得た思いをした宗門人も多いのではないか。

世界規模の課題となっている、ライフスタイルの改革は、宗教的な生き方の実践によって先取りすることができる。急激な時代の変化から取り残されがちなイメージがなくもない伝統宗教が、実は「消費は美徳」の時代より一歩先を歩んでいたのだ、とまで言ってしまうと、お気楽で我田引水も甚だしいということになろう。だが、宗教を信じる人々が、信仰に支えられた生き方の価値にもっと自信を持ってよいことだけは確かである。