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宗教文化教育と学生側のニーズ

2009年5月14日付 中外日報(社説)

日本宗教学会と「宗教と社会」学会が共同で検討している「宗教文化士」の資格化を目指す研究・調査は、科学研究費補助金の助成を得て、昨年度から本格的に実施されており、その概要はホームページ(http://www2.kokugakuin.ac.jp/shukyobunka/index.html)でも公開されている。

両学会の試みがどうなるかは、学生の側にどの程度のニーズがあるかが大きな決め手となる。いくら制度を整えても、大学生にそのようなことへの関心が薄ければ実現しない。

このことを踏まえて、と考えられるが、昨年十月から十二月にかけて、研究メンバーは大学生を対象とした大掛かりな意識調査を実施している。調査の対象となったのは全国の三十八の大学の五千五人の学生である。報告書は三月に刊行され、関係者に配布された。結果はなかなか注目すべきものとなっている。

アンケート調査では、宗教文化教育が目指すものを概略示した上で、「宗教文化士」という資格が設けられた場合、その資格をとりたいと思うかどうかを単刀直入に質問している。この質問に対しては、「とりたいと思う」と回答した学生が七百二十七人(一四・五%)、「条件(単位、取得費等)によってはとりたいと思う」と回答した学生が二千百四十七人(四二・九%)となっている。それに対し、「あまりとりたいとは思わない」は二五・三%、「とりたいと思わない」は一六・九%であった。

この数値をどう評価するかだが、実際はどうなるかは別として、意識の上でこの資格を比較的積極的にとらえている学生が過半数に達したという事実は、かなりの重さを持っているといえよう。また報告書の分析で注目されるのは、この資格に比較的積極的な学生の割合が、宗教系の大学と非宗教系の大学とで大差なく、宗教系の大学が約三%高いだけという点である。また学部別のクロス集計を見ると、理系の学部の学生でも三割以上が比較的積極的ということが分かる。

宗教はアブナイ、近寄らない方がいい、といった意識を持つ者が多いといわれる昨今の学生であるが、宗教文化教育にはむしろ必要性を感じている状況が見えてくる。

むろん、これは宗教学関連の授業をとっている学生が多くを占める調査の結果なので、その点は差し引いて考えるべきかもしれない。ただ仮に宗教文化士の資格がスタートしたとするなら、対象となるのは宗教学関連の授業を受ける人たちということになるわけであるから、今回の調査結果は細かく検討すべきものである。

またこの調査では、どのような内容の講義を受けたいかも、複数回答形式にして質問している。最も関心が高かったのは「世界の神話」であり、六〇・七%に上った。以下、「宗教が文学・音楽・美術・建築・映画などの文化に与えた影響」が五二・〇%、「生き方や死後の世界などについての、それぞれの宗教の教えの違い」が四七・二%、「日本の伝統的宗教のしきたり」が四五・五%といった順である。

逆に比較的少なかったのは「ムスリム(イスラム教徒)の戒律と実生活」が二七・二%、「暮らしの中の仏教」が二七・六%、「新宗教と呼ばれている近代以降の新しい宗教の活動」が二八・六%などとなっている。"関心"の平均レベルは四五%程度であるが、これは講義する側に参考となろう。

アンケートにはまた、こうした資格はどのような職業の人に必要と思うかなど、興味深い質問が含まれていた。大学での宗教についての学びは、社会人として生活するとき、どのような形でかかわることになるのか。宗教文化士にかかわる研究は、そうしたことも扱っているようだ。今後の調査・研究の結果に注目していく必要がある。