ニュース画像
落慶法要に続き、つき初めする小堀管長と見守る坂井田住職(右)
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

激変する現代社会に向き合う姿勢が必要

2010年3月25日付 中外日報(社説)

三月上旬に『宗教と現代がわかる本2010』(平凡社)が刊行された。このシリーズは平成十九年に創刊されているので、四冊目となる。広く注目を集めているようで、こうした企画が一定のニーズを持っていることを示しているのだろう。

今回の特集は「宗教と映像メディア」で、映像メディアが多様に発達する中、宗教の今後がどうなるかを予測させる興味深い論考が含まれている。またレポート、テーマとしては、じっくりと考えるべき課題と並んで、宗教法人の税制問題、大学におけるカルト問題、裁判員制度と宗教など、宗教関係者にとって喫緊の課題ともいうべきものも扱われている。

この本は比較的短いエッセーを集めているので、議論がじっくりなされているわけではないが、日々起こっている宗教をめぐる新しい問題が、多角的な視点から幅広く扱われているのが特徴である。二十一年一年間の宗教関係の出来事、あるいは刊行物、映画などを網羅したデータ篇も充実していて、便利である。

宗教界がきちんと考えていかなければならない今後の問題が少なくないことがよく分かるが、こうした情報が、果たして宗教界の人びとにどれほどの現実感でもって受け止められているかが、気になるところである。

例えば特集に寄せられたエッセーでは、宗教をめぐるかつてない状況もいくつか指摘されている。ユーチューブでは宗教に関する多様な情報が流されている。そこでは必ずしも宗教は肯定的には扱われていない。むしろ否定的映像、からかうような映像があふれている。言うまでもないことだが、信憑性の薄い情報も数多く混じっているのである。

イスラームのメディア利用の状況も報告されている。イスラームというと、もっぱらテロとの関係が注目されがちだが、映像メディア戦略に関しては、日本の宗教界をしのいでいる面もある。中東のイスラームだと、メディア利用への保守的な立場が一方に厳然としてあるが、それとのせめぎ合いの中で、現代社会と向かい合う流れも生じているのである。

あるいは新しい宗教運動のメディア戦略も分析されている。幸福の科学は映像情報をインターネット、映画にと、きわめて積極的に発信するようになっている。

特集以外でも、多くの興味あるトピックが扱われているが、これらを宗教関連ニュースの羅列と受け流すべきではなかろう。社会的存在としての宗教のあり方を考えるときの、さまざまな視点が提供されていると読み込むべきである。

宗教の社会貢献とか、社会的責任といった言い方は、最近よく目にする。このような観点からの議論に対し、疑義を挟む人もいる。煽られるようにして社会的な活動に手を広げるのでなく、それぞれの宗教教団がそれぞれに信仰のあり方を深めることで、その使命を果たすべきであるというような主張になろうか。

これはこれで当然の主張である。あまりに社会を意識しての活動は、スタンドプレー的になりかねないし、場合によっては税制改革を意識したパフォーマンスではないかと、変な勘繰りさえ生みかねない。

それでも、社会が宗教に対してどのような目を向けているかを探り、社会的活動を通して自分たちの理念をもっと積極的に訴えていこうとする立場は、決して捨て去るべきものではない。

昨年末に刊行された『社会貢献する宗教』(世界思想社)には、宗教団体あるいは関連の団体が、現代社会の諸問題にどう取り組んでいるかの具体例が示されている。こうした現実例の検討は、自分たちの教団と社会との関係を考える上でのヒントとなり得る。

宗教的理念や信念に基づく議論も重要であるが、激しく変化する現代社会との向かい合いということを避けて、宗教団体が人びとの共感を得ていくのは困難といっていいだろう。ここで紹介した書籍以外にも、広い視野から宗教と社会の関係を論じた書籍が、このところいくつか刊行されている。それらに収められた情報は、社会の宗教に対する目を知る上で、資すること大である。