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ちょっとした配慮で社会的弱者への支援

2010年5月8日付 中外日報(社説)

ターミナル駅の前などでは、『ビッグ・イシュー日本版』という冊子を売っている光景に出くわすことがある。

ビッグ・イシュー(The Big Issue)については、テレビで紹介されたりしたこともあるので、その仕組みについて知っている人もいるだろう。だが、一般的には認知度はまだそれほど高いとはいえない。警戒したような様子で、販売者に近づかないように歩いている雰囲気が感じられる人を見掛けることもある。

ビッグ・イシューの販売は、ホームレスの人たちの社会復帰、自立を支援するために考え出されたシステムである。始められたのはロンドンで、一九九一年のこととされる。これを知った日本人が、日本でも採り入れようと奔走し、平成十五年九月に大阪で創刊されることとなった。最初、十九人の販売者(ベンダーと呼ばれる)から出発し、次第に各地に広まってきている。

日本で売られているものは、英語版の翻訳、それに日本独自の記事から成っている。著名人のインタビューや社会問題を扱うなど、コンパクトだがそれなりに読み応えのある内容になっている。

比較的薄い雑誌で、当初一冊二百円で路上で販売されていたが、現在は一冊三百円になっている。月二回の発行である。三百円のうち、百六十円が販売者の手元に残る。販売者はいずれもホームレス状態から脱却しようと努力している人たちである。

システムは以下の通りである。まず登録した販売者に対し、事務所から十冊が無料で渡される。全部売れれば、三千円が得られることになる。これを元手として、販売者各自の判断で雑誌が何冊か購入され、その後は三百円のうち、百六十円が販売者の収入となるわけである。

場所や人によってだいぶ差があるようだが、一日売って、収入は平均数千円のようである。道路で無許可で販売しているので、厳密に言えば問題だとする人もあるが、実際には黙認状態になっている。ただ事情を知らない警察官がやってきて、一時的だが販売をやめなければならない事態になった例もあるという。

これは一つのアイデア勝負のビジネスというふうにも見なせる。しかし、基本的にはホームレスの自立支援が主目的であり、実際この販売者から自立への道に至った人もいるという。社会的に支えていく姿勢があってもよかろう。

宗教界のごく一部にも、この試みを支えようという動きも出ている。たとえば、仕入れに協力した金沢のカトリック教会の例が昨年報じられている。そこまでいかなくても、できる範囲での協力を検討する神社、寺院、その他の宗教施設があっていいのではないか。販売の場所の積極的な提供と、この販売活動がどんな目的をもってなされていることかを簡単に紹介することくらいは、そう手間ひまかかることではない。神社や寺院などは、広い敷地を持っている場合があり、しかも人が多く集まる場所に位置することも多い。

場所の提供は、公道で無許可で販売している点が、厳密に法を適用する場合のネックになる現状から、それだけでも販売者たちにはありがたいことではなかろうか。社会貢献と大上段に振りかざさなくても、こうしたちょっとした「社会的弱者への配慮」こそ、大事なことに思える。