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"イオン進出"の波紋

2010年7月8日付 中外日報(社説)

国内カード会員千七百万を誇る流通大手・イオンが葬儀業に進出し、葬祭業界と宗教界にも大きな波紋を生み出している。

葬祭業界はシェア10%を目指すと豪語する大手の参入で大波をもろにかぶるわけだが、宗教界での"反響"は、同社が葬儀事業の新たな展開として「お坊さん紹介サービス」を始め、そこで「八宗派の総本山から許可を得ている」とPRしたことと、「あくまでも目安」としつつ、戒名に応じて布施の額を体系化して示したことが直接のきっかけだ。

全日本仏教会がこれを問題視し、加盟教団・団体あてに「許可」の有無や営利企業による布施の「目安」表示の是非について「お伺い」を送付した。反応は比較的大きく、多くの宗派の宗議会等でこの「お伺い」について、特に「許可」の有無の問題が何らかの形で言及された。

結論を言えば、「八宗派総本山」の許可は存在しなかったのであり、本紙の報道によれば、葬祭事業を進めているイオンの子会社㈱イオンリテールの担当者もそのことは認めている。「八宗派総本山」からの事業自体に対する「許可」ではなく、「連携」している寺の僧侶が「八宗派の許可」を得ているという意味だそうだ。つまり、イオンが「連携」している寺院は宗派と包括・被包括関係にある、ということだろうか?

好意的に見れば"安心""信頼"を強調するあまりの勇み足、ということもできるかもしれない。だが、葬祭業に本格的に進出した同社に、こうしたPRが不適切であることを指摘できる見識を備えた関係者がいなかったのは残念だ。同じことは「布施」の問題についてもいえる。

「布施」の体系化については、イオン側は「あくまでも目安」と断わってはいる。だが、同社は価格の明確化、さらに全国一律基準(同社のブランド・トップバリュのように)への志向がはっきりしている。黙って放置すれば、流通業界の論理を宗教の世界にさらに強く押し付けようとするだろう。

たとえ但し書きがあろうと、布施が喜捨であるという本質を誤解させるものだ――と仏教界が強く抗議して撤回を求める必要があるのではないか。

だが、本紙記事でも指摘されている通り、「イオンの葬儀」が今後、社会的には一定の評価を受ける可能性は少なくない。理由としては金銭的な安心感も大きいが、決してそれだけではないだろう。

大都市圏では僧侶の"人材派遣"がビジネスとして成り立つ状況だった。言うまでもなく、多くの都市住民が寺との日常的な付き合いを持たないためだ。こうした寺離れとその対策について、ここで論じる余裕はないが、いずれにせよ家族が亡くなり、葬儀をしなければならない時、少なからぬ人が途方に暮れる。この時、頼りになるのは葬儀社であり、紹介業者だ。

そうした人々の大部分が実は郷里に菩提寺を持つ。だから、法要・葬儀の相談の窓口を宗派でつくるなど何とか対応できないか、という議論は一部にあった。しかし、効果的な方法を考え具体化しようとすると、問題点がいくつも浮上し、暗礁に乗り上げる。

都市部の寺院は檀務で精いっぱい、郷里の旦那寺から檀家を取ったというような目で見られるのも困る、だから面倒なことはしたくない。一方、宗派が僧侶や寺院を紹介するにしても、トラブルや苦情があった場合、どう対応すればいいのか……。講演会や教化イベントを行なうより、ハードルは高く、はるかに難しいようだ。

しかし、それを必要としている人がいるのは事実だ。「できない」理由を数え上げるより、離郷した檀信徒対策の一環として、実現の可能性をもっと追求していいのではないか。

手をこまぬいていると、都市部の寺院は本末関係とは別に、イオンのような大手業者のもと"仕事"の関係を通して多少なりとも組織化されてゆくだろう。葬儀までがどんどん世俗化する、これはあまり想像したくない未来図である。