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なぜ取り組まぬ一票の格差是正

2011年1月15日付 中外日報(社説)

国会議員の数が多過ぎるという声。選挙によって一票の重みに格差があるのは不公平だという声。有権者として当然の主張ではあるが、実は二律相反する無理な願いだ。

十二月中旬と今月上旬の一部の新聞に全ページの意見広告が掲載された。「清き一票、実は〇・二票」という趣旨の大見出し付きである。「一人一票実現国民会議」が広告の主体で、メンバーには大宅映子、角川歴彦、三枝成彰、櫻井よしこ、廣中平祐、堀田力、宮内義彦氏ら四十人が名を連ねる。

昨年七月に行なわれた参議院通常選挙の選挙区(かつての地方区)で、有権者数最少の鳥取県(改選定数一)の一票の重みを一とした時、神奈川県(改選定数三)の一票の重みはわずか〇・二、つまり五倍もの格差があった、と意見広告は指摘する。

大阪府、北海道、兵庫県の重みは〇・二一、東京都は〇・二三と、有権者数の多い都道府県は不利という数字が示され、早急な是正を求めている。

参議院の定数は選挙区一四六、比例区(かつての全国区)九六の計二四二議席で、三年ごとにその半数が改選される。問題視されているのは、選挙区での一票の重みの格差が、次第に拡大していることだ。

この問題については各地で訴訟が提起され、その多くについて最高裁や各高裁で「大きな一票の重み格差は違憲、または違憲状態」との判決が示された。しかし「選挙結果は無効」とまでは断じないから、結果的に抜本的な是正は先送りされることになる。

この意見広告に呼応するかのように、十二月二十二日には西岡武夫・参議院議長が改革案をまとめ、各会派の代表に示した。選挙区と比例区を一本化し、全国を九ブロックに分割、二四二の定数を、最大の南関東(埼玉、千葉、神奈川、山梨)の四四から最小の北海道の一二まで、有権者数に比例して配分する。西岡議長は、定数削減は次の段階で考えるという。

これに先立って、民主党は定数を二〇〇に削減、全国を十一ブロックに分け、最大の近畿(六府県)を三二、最小の四国(四県)を六とする案を、同党参議院議員総会に示した。両案とも、一票の格差を一・二倍の範囲に収めている。

だがこれらの案が、早急に審議される気配はない。ブロック制に一本化されると、大規模県に挟まれた小規模県出身の候補者が、集票力の点で不利な立場に置かれる。つまり、底流には「少なくとも一県から一人は送り出す」原則へのこだわりがある。それでは格差解消ができないことは誰にも分かっているのに、誰も声高く主張しない。

平成十六年の最高裁判決の際にも、五人の裁判官の補足意見として「政治的にまとまりのある単位を構成する住民の意思」を尊重すべきことが示された。裁判所側にも県単位の選出制尊重意識から抜け切れないことが感じられる。

前記「国民会議」の意見広告では「日本でも……人口比例に基づく選挙区割り(但し県境をまたぐ)が、実現可能です」と、さりげなく提唱するにとどまっている。これほど有力なメンバーが、なぜもっと歯切れのよい具体案を提示できないのだろうか。

先に示された二つのブロック選出制案が実施できない時は、小規模県を合区とするとか、三年ごとの一人改選を六年ごとの一人改選とするなど、思い切った改革を断行しない限り、一票の重みの格差是正が実現できるはずはない。

明治時代に、国会開設に先駆けて代議制度のモデルケースを示したという浄土真宗本願寺派の十二月臨時宗会は「宗法」改革案を熱心に討議した。改革案には「宗会」を「代議員会」化する条項も含まれる。良識の参議院が明治の先例を想起しつつ、宗教界に範を求める姿勢があってもよい。