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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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政治の機能マヒが招く閉塞感を憂慮

2011年6月16日付 中外日報(社説)

他紙に特ダネを出し抜かれると「やる気がないか、無能かだ。君はどっちだ」と部下を叱り飛ばす名物デスクがある新聞社にいた。言い訳に窮する"決めぜりふ"を記者らは恐れた。先日、同様のフレーズをある評論で発見し、思わずひざを打った。その矛先は不毛な政争で大震災の復旧・復興を滞らせる政治家たちだ。

某全国紙の世論調査でも、国会が「機能していない」との回答が85%に上ったそうだ。デスクの叱責は記者の奮起を促したが、評論の指摘は残念ながら混迷する政界に効き目はなさそうだ。政治不信が極まる中、閉塞感を深める人々の心の行く末が気に掛かる。

私事で恐縮だが、筆者は中学校の恩師が主宰する日本の近現代史を学ぶ会の運営を手伝っている。世代を超えた教え子たち約30人の集いである。80歳になる恩師は昔、社会科の授業で現憲法の平和主義を熱心に説いてくれた。過日、月1度の例会で「先生の教えの今日的意味を考えよう」と提案したら、若い高校教師の切り口上的な発言にさえぎられた。「今度の震災でも政府は無力。混乱に乗じて隣国が日本の領土をかすめ取る恐れがある。今必要なのは核武装であり憲法9条は無用の長物」と彼は言うのである。

一瞬あぜんとしたら「私の生徒の9割は同じ意見」と続け、生徒の意識調査結果というペーパーを得意げにひらひらさせた。他の会員に「えらく怖い授業をするものだ」とたしなめられたが、何か気をそがれた会になってしまった。

この事例を一般化するのは取り越し苦労と考えたい。ただ、時代の空気の危うさのようなものが目の前を通り過ぎたようで、後味の悪さが残るものだった。

震災は発生から約100日が過ぎ復旧・復興の遅れがはっきりしてきた。原発事故収束も不透明で国全体の経済低迷や生活不安への影響も長引きそうだ。そんな中での政治の機能不全。人々のいら立ちが内攻することを恐れる。政党政治の行き詰まりさえ思わせる状況を、国の破局へと走り始めた昭和初期に重ねる政治学者もいる。関東大震災以降昭和恐慌へと至る歴史の暗転、東北地方の冷害などに無策だった政党内閣に不信が募り、満州事変から「五・一五」事件へと突き進んだことを指す。

「五・一五」もその後の「二・二六」事件も、東北など農村の窮乏が背景にあったとされる。再び「国難」と語られる今、国民の生活が第一のはずの政治が「やる気がない」か「無能」か、と問われる事態を深刻に受け止めたい。