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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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今に通じる釈尊の七不退法のおしえ

2011年7月5日付 中外日報(社説)

長野県松本市の私立高校2年生170人が、沖縄県・摩文仁の「平和の礎」に刻まれた沖縄戦の戦没者24万人余の氏名を全て書き写している。一人一人の死と向き合い、沖縄の悲しみを知りたいという。広島の通信制高校は沖縄の学習センターと結び平和を学ぶ特別授業をした。沖縄「慰霊の日」(6月23日)に寄せて琉球新報に掲載された記事で知った。

本土ではあまり目にしない小さなニュース。だが、若者が沖縄を通し平和を考える努力に気持が安らぐ。大人たちが思慮もなく、沖縄の心を踏みにじる政治・外交を続けているからなおさらだ。

思考停止という言葉を昨今、よく耳にする。流行の失敗学では個人、集団を問わず過去の成功体験に固執し、また不都合な事実には目をそむけ、惰性に流れる心理の動きを言う。いずれ取り返しのつかない事態を招く。独り善がりな安全神話が災いした今度の原発事故と事故後のもたつきは象徴的な事例とされるが、沖縄問題でそれは一段と鮮明になる。

震災に関心が集中する間、沖縄ではさまざまな出来事があった。米国務省日本部長が「沖縄はごまかしとゆすりの名人」発言で更迭されたのは震災の直前だったが、同じ3月に交通死亡事故を起こした米軍属が「公務中」を理由に不起訴となった。その後も事故を起こした米軍関係者の「特別扱い」が相次ぎ県民が激高する中、4月には米軍へのいわゆる「思いやり予算」で今後5年間、毎年1880億円を日本が定額給付することが決まった。県民の猛反対で停止中の普天間基地の辺野古移設計画で鳩山由紀夫前総理が県外移設を主張した際、日本の外務・防衛官僚が米国側に「(日本に)妥協すべきでない」と助言していたとの米国秘密公電が5月初旬に暴露された。無分別な対米追随や基地公害の事例は他にも数々あったが、多くは米軍の震災救援「トモダチ作戦」への本土メディアの声高な称賛でかすんでしまった。

辺野古移設は沖縄を視察した米議会の実力者でさえ「事実上困難」とさじを投げたのに政府は6月、旧来計画のまま実施を確認した。それもこれもつまるところ米軍による「抑止力」神話の前に思考停止している結果であろう。

筆者は一連の動きに『大パリニッバーナ経』冒頭の七不退法を連想した。平和を愛する釈尊が、ある国の王の使者を介し法を守る第三国への戦争を戒める教え。逆に同胞を大切にしない国は滅びるという含意がくみ取れる。まさに今の日本の姿と重なるように思う。