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不活動法人対策と「宗務行政」の範囲

2011年9月1日付 中外日報(社説)

不活動宗教法人の問題にスポットが当てられることが最近増えてきた。マスメディアでは宗教団体を偽装した営利活動のための法人売買(正確には金銭の授受を伴う代表役員の交代)に関連して言及されることが多い。

文化庁は、宗教法人売買を阻止し、宗教法人制度の社会的信頼感を高めるため、認証厳格化の必要性を示唆しているが、所轄庁としてはやはり「不活動」とみられる宗教法人が数多く放置されたままになっている状況の是正(不活動宗教法人数の削減)が第一義的課題になるだろう。

ちなみに、歴史をさかのぼれば明治5年11月8日に、太政官から無檀無住の寺院廃止の命令(原文は『太政類典』所収)が出されている。神仏判然令をはじめとした廃仏毀釈の大きな流れの中で打ち出されたものだ。地方の寺院史などを調べていると、明治5年に廃寺となった記録を時折見掛けるが、太政官の命令が忠実に実行された証拠とみてよい。

明治後期には「神社合祀」で多くの神社が消え去った。国家神道政策の一環であり、基本的に反神道、反宗教の動きではなく、行政の合理主義的発想・志向が根底にあるといっていいだろう。南方熊楠らがこれに激しく反対したことはよく知られているが、神社合祀によって地域社会の中で現実に息づいていた信仰、伝統文化が破壊された影響の大きさは無視できない。

ところで、文化庁は平成23年度から不活動宗教法人対策推進事業を実施している。都道府県単位で対策委員会を設け、不活動法人「整理」の効果的手法確立を目指すという。

被包括法人に関しては、包括法人(宗派)を通じた対策が既にある程度効果を挙げている。所轄庁・包括宗教法人用資料として『不活動宗教法人対策事例集』が宗務課から発行されており、それを見ると、事例蓄積を通じ、不活動宗教法人の解散や合併もマニュアル化されていることが分かる。

問題は――所轄庁の立場から見れば――包括法人の協力が得られない単立宗教法人であって、新しい事業は事実上、単立宗教法人をターゲットとしている。

有効な不活動宗教法人対策が今必要であることは間違いない。だが、行政の裁量が信教の自由の領域に踏み込んではならない。むろん神社合祀などとは歴史的背景も全く異なるが、不活動法人対策が宗教法人法の許容する範囲を超えることがないよう、関係者はあくまでも慎重を期してほしい。