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「とらわれない」発想 創意工夫に夢と希望を

2011年10月1日付 中外日報(社説)

ノーベル賞の季節、10月初めの生理学・医学賞をトップに各賞の発表が続く。関連学会の賞を総なめにした山中伸弥・京都大学教授の「iPS細胞」研究などが有力視されているが、一般にはあまり知られていない地道ながらユニークな研究が、授賞によって知られるケースも多い。

今年はどのような夢のある研究が栄誉に輝くかと想像するのも楽しい。それらを育むのは、研究機関や大学の創造性豊かな、固定観念や実利至上主義からも自由な雰囲気と環境だ。

分析機器メーカー島津製作所の「創業記念資料館」が京都にある。明治以降の、金属の強度を測る「繰り返し衝撃試験器」や「金片羽毛墜落試験器」「電卵・蛇紋管」など、名前を見ただけでわくわくするような独創的な機器類が多数展示されている。家庭に電気が未普及の大正初期に製作された扇風機など、金もうけを二の次にした発明もある。

同社の田中耕一さんがノーベル化学賞を受けた平成14年にも、筆者は同館を見学し、脈々と流れる創意工夫の伝統を実感した。元々は電気工学畑の田中さんは、化学実験中に試薬を間違えて混ぜてしまい、結果的にそれがたんぱく質をイオン化する「ソフトレーザー脱離法」の開発につながった。

同じく化学賞(平成20年)の下村脩さんも、本来は生物学者で、研究の端緒は緑色に光るオワンクラゲへの興味だった。下村さんは、未来を担う子どもたちへの講演で「やり始めたら、やめたらだめ」と強調する。

昨年、チャレンジ精神で国中を沸かせた小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネジャー川口淳一郎さんは「失敗するチャンスを与えよう」「減点法をやめて加点法に」という。いずれも、リスク回避に拘泥するより、新しい発想をということだ。

それを突き詰めた「イグ・ノーベル」も有名になった。究極の独創性とユーモアが要件のこの世界的な賞には、「牛の排泄物からバニラの香り成分を抽出」「カラオケの発明によって人々の新たな交流手段を提供した」などの功績で、日本人も過去何人かが「栄冠」に輝いている。

「前へ」「変わる時」は掛け声ばかりで、重苦しいこの時勢。「とらわれない」という、宗教的でさえあるこの姿勢から、例えば雷を捕まえて蓄電したり、台風のエネルギーを電力化したりする発明が実現しないだろうか。復興にも、どんな取り組みにでも、地道さと同時に夢と希望が必要だ。