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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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国内でも宗教間摩擦 問われる共生の理念

2011年10月22日付 中外日報(社説)

現在日本にあるモスクは60を超えている。他の建物を転用したのではなく、最初から礼拝専用に建てられたものは、マスジドとかジャーミイなどと呼ばれる。東京ジャーミイや神戸マスジドなどは、戦前からある。今後モスクの数は増えていくと思われるが、それと共に地域住民との軋轢も生じる可能性がある。

実際に金沢市では、石川県初のモスク建設に対し、反対運動が起こっている。石川ムスリム協会が中心になって進めている建築計画に対してである。金沢大学の留学生などが積極的に関わっている。

しかし金沢大学にほど近い土地を取得したところで、地域住民から建設に反対する声が多く出されたという。やはりイスラームと聞くと、テロを連想する人が多いからというのが、主たる理由であるようだ。

地方都市の住民がこうした考えを抱く理由はよく分かる。日常的なイスラーム関係のニュースには、いわゆる原理主義的な主張を掲げるグループが起こした事件が少なくない。イスラームについての基本知識が乏しければ、メディアが報道する事件によってイスラームのイメージを形成してしまうのも無理からぬところである。

最近の中等教育では、地理などの教科において、イスラームに関する記述が増えている。従来の教科書に比べると隔世の感があるほどの充実ぶりである。しかしたとえ教科書に多くの情報が記載されていても、それが教師によって適切に説明される機会がなければ、あまり意味を持たない。

「2ちゃんねる」の、この事件に関するスレッドを見ても、イスラームに関する基本的な知識がほぼゼロであろうと思われるような書き込みが多数見られる。「2ちゃんねる」への書き込みは比較的若い世代が多いとみられるが、こうした偏見が広まると、イスラーム・フォビア(恐怖症)がここから生まれてしまう可能性もある。

ヨーロッパにおいては、幾つかの国でムスリムの人口が増え、それに伴う社会問題も起きている。そうしたニュースもまた、若い世代の一部に危機感をもたらしているのであろう。

ただ世界の人口の約2割を占めるムスリムに対する基本的な理解が欠如している現状は、放置しておくべきではない。今回の金沢市のような場合、大学の教員や、あるいは地域の宗教関係者は、この事態を傍観しないでほしい。宗教協力とか共生というようなスローガンは、こうした場合にこそ、真価を問われる。