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日中関係の展望には文化交流史も想起を

2012年3月3日付 中外日報(社説)

2月上旬に発売されたある週刊誌に「徴兵制復活を話し合った」というコラムがあった。59歳から76歳までの財界人、大学教授、元ジャーナリストなど、数人の私的な会合の報告だ。「徴兵制を論議すると周辺諸国に警戒される」という慎重論と「いつまでも米国が日本を守ってくれるとは限らない。自主防衛力強化を」という積極論がぶつかり合ったそうだ。

日米安保体制は、冷戦時代には旧ソ連に対抗するためのものだったが、今は中国の軍事力を抑える役割を果たしている、というのが軍事的な解釈である。日米連携で中国と対峙する形だ。

ところが同じころ、NHKラジオの経済解説で、三井物産戦略研究所の寺島実郎会長は「経済的には米中間のパイプが太くなりつつある」と述べた。2011年の実績で米中の貿易額は、日米貿易の2.6倍に達した。米国の企業が中国へ進出し、現地生産した製品を米国へ逆輸出している。中国のドル保有高が日本を追い越したのはそのためだという。

経済的な視点からは、米国にとって今最も大切な相手は中国であり、かつての経済大国である日本の存在は軽くなる一方だとか。近年、中国の要人が米国を訪問すると、米側の経済閣僚や企業トップが接触し、協議を重ねてきた。しかしなぜか、日本のマスコミはそうした動きを伝えようとしなかった、と寺島氏は指摘する。

ところが2月中旬、異変が起こった。中国の次期最高指導者とみられる習近平副主席の訪米を、日本の各紙は大見出しで報道した。オバマ大統領が、現在はまだ格下の副主席である習氏と85分間も会談したのだから、無視できない。日本の野田佳彦首相の訪米計画がモタついているのと対照的なものを感じる。

政治の面で米側は習氏に、国際ルールの順守をはじめ、少数民族問題や人権問題について、厳しい注文を付けたようだ。しかし経済的には米中親密化がさらに進行した。習氏の5日間の滞在中に、随行の中国側300社500人が、大豆からICチップまで271億ドルもの買い付けを発表、米国経済に刺激を与えた。

こうなると、徴兵制の復活論議は別として、日米安保体制の重みが変化する事態も想定しておくべきだろう。軍事、経済など目先の現象だけでなく、日本と大陸の間の、長い文化・宗教の交流の歴史も顧みる必要がある。特に仏教を通じて、日中間のパイプは太いのだ。日米関係だけでなく、多角的な外交観を大切にしたい。