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アンドロメダ銀河 衝突説に思うこと

2012年6月16日付 中外日報(社説)

中国・明代の小説『西遊記』に登場する孫悟空は、三蔵法師の弟子になるまでは、手の付けられない暴れ者の猿だった。ある時、●斗雲に乗って世界の果てまで飛んで来たと豪語したが、実はお釈迦様の胸と手の間を移動したにすぎなかったと知らされる一節がある。これを読んだ当時の中国の人々は、どんな宇宙観を抱いたであろうか。

先ごろ、一部の新聞に「約40億年後、太陽系の属している銀河系と、アンドロメダ銀河(星雲)が衝突する」という記事が出た。米航空宇宙局(NASA)が観測を基に得た推論で、●斗雲とは比較にならぬ壮大な話だ。

現在、250万光年も離れている両銀河は、時速約40万キロで接近しつつあり、40億年後に衝突するという。衝突といっても、個々の星の間には十分な隙間があり、太陽が他の星と衝突することはないらしい。新聞によっては「地球は大丈夫」の見出しを入れたものもあった。

だが本当に大丈夫だろうか。40億年たつと、太陽は老化して膨れ上がり、地球をのみ込んでしまうという。アンドロメダ銀河の影響は受けないものの、赤色巨星化する太陽の前では、地球は大丈夫ではあり得ない。

実はこうした事情は、天文学界では既に常識になっている。だから例えば今年1月に、素粒子物理学者の村山斉氏が集英社から出した『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』にも簡明に記されている。NASAの発表を取り上げなかった新聞があったのは、そのためであろうか。

地球が太陽にのみ込まれるとは大変だ、と浮足立つ人がいるかもしれない。だが40億年といえば、地球上に最初の生命体である単細胞が生まれてから現在に至るまでの期間と同じであり、途方もなく長い時間だ。

この40億年間を、通して生き抜いた生物の種は存在しない。人類が現在の「新人=現生人類」に進化してから、まだ20万年しかたっていない。言い換えると、現生人類が今後40億年生き続けるという保証はないのだ。

人類の将来をうんぬんして、未来の展望を台無しにするとは、との意見もあるだろう。だがこれはギリシャの哲学者が「万物流転」を説き、仏教が「諸行無常」を説いた境地に通じるものだ。全ての宗教が現実を見つめ、それぞれに「新しい神学」を構築すべき時ではないだろうか。この瞬間にも、アンドロメダ銀河はわが銀河系に近づき続けている。

●=角+力