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調査のための調査に終わらせないように

2012年8月25日付 中外日報(社説)

脱原発を求める首相官邸周辺の「金曜デモ」は、大飯原発の再稼働開始後も続けられた。この現象について作家の高村薫さんは「原子力という『えたいの知れないもの』に対する不安の表れだ。政治家にはそれが分かっていない」=要旨=と指摘した。

なぜ「えたいが知れない」のだろうか。放射能は目に見えず、においもしないが、重大な病気の原因になるらしい。それが不安をかき立てるようだ。

これについて、戦後の高校教育の"欠陥"を挙げる向きがある。理科では物理や化学を履修しなくても卒業することができる。そのために、自然界に存在する放射能への正しい理解を体得しないまま「えたいの知れない」恐怖感を抱く風潮を招くという。

そこへ最近、気掛かりなデータが、文部科学省から発表された。今年の「全国学力テスト」で中学生の理科離れの実態が明らかになったというのである。

今回のテストは、従来の国語と算数・数学の2科目のほかに、理科が加えられた。全国から約3割の学校を抽出、小学6年生と中学3年生を対象に実施されたが、中3の理科の正答率が52・1%と低く、特に実験に関係のある問題の不成績が目立った。

さらに「理科の勉強が好き」との答えは、小6の82%に対し、中3では62%だった。この傾向が高校での物理・化学離れに結び付いているのかもしれない。

「文部科学省の調査で、思い出すことがある」と、東日本在住の元教育委員長が語っている。平成17年の「義務教育に関する意識調査」での「学校で教えてもらいたい点」への回答である。

小・中学生も、保護者・学校評議員・市町村長や教育長も、一部を除いてトップに挙げたのが「善悪を判断する力」だった。当時は「ゆとり教育」への批判が高まっていたのに、学力よりも善悪への判断力が望まれたのだ。

「だがこの結果を、マスコミも中教審もほとんど注目せず、調査のための調査に終わってしまいました。『仏作って魂入れず』だったのです」

元教育委員長は言う。「この意識調査が教育現場で生かされていたら、大津市の中学校をはじめ、全国のいじめ問題にもブレーキがかかったかもしれません。当時、宗教界を中心に出されていた道徳教育強化論への追い風にもなったことでしょう」

今回の学力テストも、調査だけに終わらせず、理科教育の底上げに結び付くことを期待したい。