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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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震災の時には見えた中国民衆との心の絆

2012年10月20日付 中外日報(社説)

「大災害の時にこそ真の国民性が表われる。未曾有の大地震と津波に対する中国人と日本人の反応の差は歴然。日本人の冷静さには驚くばかりだ。命にかかわる恐怖の中でも整然と秩序を保つ。四川大地震の時は生徒を見捨てて真っ先に逃げた教師がいたが、日本ではもちろんそんな輩はいない」

中国の時事問題を日本語で報じるネット上のサイト「レコードチャイナ」に東日本大震災の直後に配信された記事である。筆者が震災から2カ月間保存したサイトの関連記事は分厚いファイルになった。多くは、この文章のように歴史的な大災害に懸命に立ち向かう日本人を中国人の立場で絶賛する内容だった。高揚する今の反日感情との落差に戸惑うが、見方を変えれば中国国民の対日観が多様なことをうかがわせるものだ。

東日本大震災は尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件が発端の反日デモから約半年後だった。だが、ネット上で見る限り悪化した対日感情は震災発生で様変わりし、翌日には「四川大地震の時に日本は救援の手を差し伸べてくれた」「被災地の日本人民のために祈っています」「天災には団結と助け合いが王道だ」とエールが届いた。

「非常時にも秩序を守り並んで食品を買う日本人を尊敬する」「日本人が見せた冷静と団結は震災の恐怖を和らげた」などの報道が相次ぐ。「日本人のイメージを一変させる光景。教科書や漫画、映画などで見せられてきた醜い日本人など一人もいない。当初、日本の不幸を喜んでいた愛国青年たちも考えを改めざるを得ないだろう」「日本の対中国ODA(政府開発援助)が累積2兆7千億円に上ることを知る中国人は少ない」などと自省を含む分析記事も目を引いた。挙げればきりがない。

山東大の教授という人は「自然災害を前に同情し、心を動かし支援することは人類の正常な心理だ。災害自体は非常にネガティブなものだが、両国民の相互理解や信頼への契機も芽生えさせた」というコメントを寄せた。

今、ファイルを読み返してみて「いったい、何だったのだろう」と思わぬでもない。だが、ネット上では先日「理性を取り戻そう」と、日中間の関係正常化を求める中国知識人の署名活動が始まり、中国人留学生たちは「中国で反日デモはあっても、日本人は僕たちに親切だ」と訴えている。民族の垣根を越えて人々の心の絆は深い所で広がっていると信じたい。ただ、民衆の感情の暴発に便乗し、政治的な思惑で憎悪を増幅し合うような動きには警戒が必要だ。