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歴史都市景観問題 広く市民の理解を

2012年11月10日付 中外日報(社説)

「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)がユネスコ総会で採択されたのは1972年。今年は40年目に当たり、6日から8日まで京都で日本政府とユネスコ主催の40周年最終会合が開かれた。

「世界遺産と持続可能な開発:地域社会の役割」をテーマに、今年1月末、パリのユネスコ本部で開幕式が開かれて以来、世界各国で様々な40周年記念行事が行われてきたが、日本国内でも上記の最終会合に前後して幾つかの会議、シンポジウムが実施されている。

7日、最終会合の会場の国立京都国際会館に世界遺産「古都京都の文化財」の17社寺城代表が集い、開催された世界遺産「古都京都の文化財」ネットワーク会議もそのうちの一つ。昨年6月に開かれて以来、同会議は2回目だ。

日本国内には16の世界遺産があり、そのうち12件が文化遺産で4件が自然遺産である。このうち宗教関係の世界遺産を数え上げると、「平泉―仏国土を表す建築・庭園・遺跡群」「日光の社寺」「古都京都の文化財」「古都奈良の文化財」「法隆寺地域の仏教建造物」「紀伊山地の霊場と参詣道」「厳島神社」の7件。国内の世界文化遺産の半数以上を社寺が占める。伝統文化継承という面で宗教界が果たしている役割の重さをあらためて実感させる数字である。

ネットワーク会議では、社寺代表から景観や防災について現状と課題が報告され、共通する問題を抱えていることが確認された。焦点になったのは世界遺産周辺の緩衝地帯(バッファゾーン)だ。

過去、京都と同じく歴史都市のドイツ・ケルンの高層建築物建設計画で、ケルン大聖堂の世界遺産登録の抹消が議論された例などがある。京都では京都仏教会や市民団体が京都ホテル(当時)の高層化を景観問題として批判し、その論争は行政にも影響を与えた。

バッファゾーンの概念は、世界遺産周辺の市街再開発と景観保存のルール作りを目指すものだ。同時に、文化財の防災対策という側面もある。会議に出席した前ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏は、歴史都市の景観の観点で、京都のより広い領域をバッファゾーンとすべきと示唆したが、防災という意味でも都市全体を視野に置く発想が必要だろう。

バッファゾーンの考え方はまだ社会に浸透していない。都市の経済活動、市民の日常生活と世界文化遺産の保護が矛盾しない、望ましい歴史都市のビジョンを示して市民の理解を得るよう努める必要がある。