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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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心こめてこそ意義 震災モニュメント

2013年1月10日付 中外日報(社説)

東日本大震災の被災地で、惨禍を記憶し将来に教訓を伝えようというモニュメントが、さまざまな形で各地に作られつつある。「奇跡の一本松」としてすっかり有名になった岩手県陸前高田市の「高田の松原」で唯一残った松は昨年、現地に展示するためにいったん伐採され保存処理に出された。

その場へ行くと切り株が厳重に保護され、保存事業への寄付を呼び掛ける看板が立ち、国道からそこまでの道には案内表示まで出ていた。だが相当な費用を要するこの事業には市民から疑問の声も出ている、と市役所で聞いた。

多くの児童が犠牲になった宮城県石巻市の大川小では、訪れるたびに碑や供え物が増え、最近では校門前に、慰霊に来る人のための大きな祭壇が加わっていた。幼い命を悼む気持ちを多くの人が共有するのは自然なことだ。だが、マイクロバスで乗り付けていきなり「記念写真」を撮るようなグループには、傍らに添えられた「遺族の気持ちをおくみ下さい」との張り紙を見てほしいと願う。

同様に慰霊巡拝の「コース」になってしまった観のある、隣接南三陸町の防災庁舎の残骸。二つの場所で同じ団体を見ることが何度もあったが、この庁舎も保存するかどうかで相反する意見が遺族からも出ている。「モニュメント」は形ではない、そこに込められた人々の思いこそが重要だろう。

安全なはずの学校でなぜ避難誘導が適切に行われなかったのか。防災の拠点であるべき建物がなぜ津波に耐えられず、たくさんの職員が命を落としたのか。そのような問題を徹底的に検証し、悲劇を繰り返さないよう教訓を将来に伝えることこそが、遺族や関係者の願いだと現地で幾度も伺った。

沿岸部にありながら津波禍を免れた古い神社や祠は、昔の災害の伝承に従って立地したものだという報告がある。逆に「ここより低い場所に住むな」との過去の津波顕彰碑の「警告」が忘れられて被害を広げたという事実がある。

岩手県釜石市の小漁村で、住民が震災・津波の教訓を子孫に残そうと石碑を自分らで建立した。過疎の村で何軒かの家が流され、将来も明るくはないが、「まずは命を守ることだ」と人々が記した碑文は「まず逃げよ、決して戻るな」と飾り気もなく簡潔明瞭だ。

近くに建設された立派な美しいモニュメントが住民にいまひとつ親近感を持たれないのと好対照。「やはり皆さんの心がいかにこもっているかです」。被災者を支え続け、碑建立にも協力した地元住職の言葉が印象に残った。