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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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大災害への備えと寺社の役割の期待

2013年1月29日付 中外日報(社説)

東日本大震災では日本三景の一つ宮城・松島も被害を受け、住民と共に観光客もそれに巻き込まれた。松島湾に多くの島が散在するという地形のおかげで、津波の影響は沿岸部の他の地域と比較すると幾分少なかったが、東北本線や仙石線をはじめ交通は遮断され、観光客も帰宅できなくなった。

その時、多くの人々が身を寄せたのが本堂などが国宝に指定されている瑞巌寺である。専門道場の陽徳院に避難してきた約400人のために、雲水による炊き出しも行われた。松島を代表する拝観寺院が大災害に当たって、一時避難所として機能したわけだ。

年間約5千万人の観光客が訪れる京都で、このほど「京都市帰宅困難者観光地対策協議会」が発足した。京都市の肝いりで、京都仏教会、京都府仏教連合会、京都府神社庁や東山の清水寺、嵯峨嵐山の天龍寺など寺社の代表が会合に参加し、防災などの専門家と意見を交換した。

京都市は直下型の大地震が起きる場合、37万人の帰宅困難者が発生し、このうち観光客が約3分の1の13万人を占めると想定している。宿泊施設など対応拠点を持たない多数の日帰り観光客の一時避難先の確保は、他の大都市にはない課題だ。

災害避難者のための特別の備えやマニュアルがなくても、緊急時には瑞巌寺のような対応が当然取られることだろう。だが、10万人を超える観光客の一時避難を考える場合、それぞれの寺社の自主的対応に全てを委ねるわけにはいかない。混乱を最小限に抑える誘導マニュアル、飲料水等の物資備蓄など組織的な取り組みが不可欠と考えられる。

地域社会の防災対策に寺社が協力するため行政機関などと協定を結ぶ例が増えてきた。多くの拝観者が訪れる東京・浅草の聖観音宗総本山浅草寺も昨年、台東区との間で帰宅困難者の一時滞在施設に関する協定を結んでいる。

本紙で紹介した京都の臨済宗妙心寺派大本山妙心寺の防災構想のように、文化財保護も指定文化財単体ではなく地域社会の災害対策と連動して検討される必要性が見えてきた。

東日本大震災では多くの寺院、神社が避難所となり、長期にわたって被災者を受け入れた。大災害が起きた時の宗教施設の役割や公共空間を含むさまざまな場での宗教者の活動について、社会的な認識はかなり変化してきたように思われる。京都の寺社が参画するこの帰宅困難観光客対策に対する期待も大きい。