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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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ホスピスに生きる人 いのち引き継ぐ場に

2013年2月26日付 中外日報(社説)

ベッドに横たわる死者を家族や知人らが囲み、医師が話をする。だがそれは単なる医療措置の経過ではなく、故人の「物語」。そして「亡くなっても、皆さんの心に住み着いて皆さんを励ましてくれるでしょう」と。映画「いのちがいちばん輝く日」は、こんな「お別れ会」のシーンから始まる。

滋賀県のヴォーリズ記念病院ホスピス棟の40日間の日常を追ったドキュメンタリーで、末期がんの4人の患者と細井順医師との生きざまが交錯する展開。例えば、重篤ながら生まれたばかりの孫にひと目会いたいという男性に、医師ら医療スタッフや家族が心を合わせて寄り添い、東京までの旅を実現する。念願通り孫を抱いた男性は、病院に戻って数日後に、皆に看取られ安らかに旅立つ。

「病気はその人の一部なのに、一般の医療は患者の悪い所ばかり探し、治すけれど生かさない。ホスピスは治さないが、その人を生かす」と言う監督は、登場人物と徹底的に心を通わせ、車いすの患者の目の高さのカメラアングルで淡々と生と死を見つめる。画面で細井医師は、患者に「何かいいことありませんか?」と話し掛け、親しく人生を語り合う。

かつて外科医だった医師は「以前は人を見ずに病気ばかり診ていたが、いのちに向き合うことこそ私の仕事」と言う。白衣は「患者さんとの間に差をつける鎧ですから」と着ないで、私服姿で仕事をする。父をがんで亡くし、自らも罹患して手術し、再発の危険性を抱えながら生きる。そんな経験から、「理由はうかがい知れないが人は皆、周囲から何かをされて生かされている。それが分かれば、生かされている者同士として、患者さんの持っているものを受け取るのが医師です」と語った。

患者が亡くなった時、医師は「最後に診察いたします」とまるで生きているように話し、「ご臨終」ではなく、「お疲れさまでした」と本人に声を掛ける。「生命は終わっても、いのちは消えることなく受け継がれる」。お別れ会でも述べられるように、医師も監督も口をそろえる。「死を意識した時に初めて本当の人生が始まる」。ここには、紛れもなく宗教的感性がうかがわれる。

ホスピス病棟を運営する宗教教団もあるが、全国的には患者数に比べて病床は絶対的に不足しており、在宅ケアも需要が高まる。画面には病院のチャプレンも登場するが、そこで末期患者に寄り添い、看取るという宗教者の役割は重要だ。映画は、宗教界に大きな問いを投げ掛けている。