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改正労働契約法は弱い人を守るのか

2013年5月14日付 中外日報(社説)

4月1日から改正労働契約法が施行された。いつ解雇されるか不安であるような有期労働契約の人の状況を改善するというのが趣旨のようだが、これを実際に適用すると、かえってそうした人が不利になる場面が数多く想定される。

内容をよく知らない人も多いだろうが、すでに示されたQ&Aを細かく検討すると、特に大学などは実情に合わない面が多々ある。大学は一般に多くの非常勤教職員を抱えるから、対処に頭を抱える場面が出てくるのは間違いない。

例えば5年を超えて非常勤を続けた講師は、非常勤の状態を無期に続けられる権利が生まれる。その大学の定年までということである。身分が不安定な若い研究者などには一見有利に見える。しかし、大学側からすると、トラブルを避けるために5年までの契約にしてしまう発想も生じる。そうすると5年を超えて非常勤講師を続けられない事態が発生し得る。

こうなると守るどころか、実際は不利な状況に追いやっていることになる。面倒な事態が生じないようにと、非常勤講師にはすでに他の大学において常勤を得ている教員しか雇わないという方針を考えている大学もあるという。

さらにこの雇用期間はティーチングアシスタント(TA)、リサーチアシスタント(RA)といった大学院生時代の同一大学による雇用にも適用される。ある大学でTAなどを3年続けた後、その大学の任期付き助手、助教、非常勤講師などに採用されたような場合だと、仮にそれまでは3年任期が一般的であっても、大学側は任期付きなら2年にせざるを得なくなる。もし3年にすると、その状態が無期になることを覚悟しなくてはいけないからである。

昨今の大学は、こうした「制度改革」に振り回されがちである。優れた研究や質の高い教育を実現していくにはどうしたらいいか、というような本来考えるべきことがむしろなおざりにされている。厚生労働省が主導権を握ってなされた改革に、文部科学省が押し切られたという声も聞こえている。

宗教系の大学も宗教の枠を超えて検討し、相談していいテーマだ。若い世代がその限りない可能性を存分に発揮できるような教育環境をつくることには、率先して頭をひねってしかるべきだろう。

大学院生のTAやRAまでも、雇用期間として年限に組み入れられてしまうような制度が、伸び伸びとした研究・教育環境に資するとは到底思えない。新法の内容を的確に把握し、しかるべき声を上げるべきではないか。