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「ヒバクシャ」の語を世界の共通の言葉に

2013年6月8日付 中外日報(社説)

世界の原子力発電所の所在を示す1枚の地図がある。原発は黄色い記号で示されている。50センチ×70センチほどの小さな地図なので、世界第3位の54基(福島第1を含め)の原発がある日本や第2位のフランスなどは、この黄色い記号でほとんど埋め尽くされている。地図には日本の6人の写真家が撮影した世界各地の「ヒバクシャ」の写真と共にチェルノブイリ、スリーマイル島をはじめとする事故を起こした原子力関連施設、核実験地、ウラン鉱山などの位置も示されていて、私たちが核の危険のもとで生活していることを強く印象づける。

地球に散らばる「核」を大掃除しよう――と訴えるこの地図を作製したのは「NPO法人世界ヒバクシャ展」。50年前に広島、長崎の被爆者に出会い、「これは僕の仕事だ」と決意して原爆被爆者の姿を撮り続けてきた写真家の森下一徹氏が中心となって立ち上げた組織だ。森下氏は広島・長崎だけでなくチェルノブイリ原発事故や核実験などの世界各地のヒバクシャの現状を訴えたいと呼び掛け、『核よ驕るなかれ』等の著書がある豊崎博光氏ら賛同した5人のフォトジャーナリストと共に、国内外の各地でヒバクシャの写真展示を行ってきた。

森下氏が病に倒れ、写真展は中断していたが、福島原発事故の後、娘の森下美歩さんが父の思いを受け継ぎ新たな活動を始めた。

「広島・長崎の被爆を経験しながら、核実験やウラン採掘、核廃棄物投棄でヒバクシャが生み出され続けるのを阻止できず、"原子力の平和利用"の言葉の下で原発建設を許し、福島原発事故で放射能汚染を広めてしまったことを、まず世界に向かって"おわび"しなければ」と美歩さん。

このOWABIから始めて、欧米・アジア・中東などでヒバクシャ展を開催し、核被害の実態を世界の人々に知ってもらいたい、と語る。核廃絶に貢献してきたヒバクシャ団体・個人こそノーベル平和賞にふさわしい、と訴え、HIBAKUSHAが世界の共通語として認識されるよう目指す。

美歩さんたちの新たな運動のスタートは京都だ。脱原発・核兵器廃絶を訴えてきた有馬頼底・京都仏教会理事長が実行委員長に就任。8月6日から9月8日まで承天閣美術館で「世界ヒバクシャ展@京都」を開催する。写真家・水野克比古氏が世界遺産の金閣、銀閣を背景とする構図の中にヒバクシャの映像パネルを置く写真を撮影し、ポスターを作製するという。同展の成功を期待したい。