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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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宗教界も深刻な課題 巨大地震の予知困難

2013年6月18日付 中外日報(社説)

東海地震が「明日起きてもおかしくない」といわれてから30年以上がたつ。今は東南海、南海地震と連動する南海トラフ巨大地震の可能性が懸念されるが、地震予知は期待したほど進んでいない。国の作業部会が5月末、巨大地震の予知は「困難」という最終報告を出したのはその表れだ。

「科学者は『絶対』という言葉はめったに使えない。(略)今日まだ地震がいつどこに起るか、それがどんな強さであるかをはっきりとは予知できない。天災よりも更に一層始末が悪いのは、人間自身の予知の困難な行動である」

湯川秀樹博士がこの文章を朝日新聞に寄せたのは昭和32年。以来、半世紀余の間に科学は大きな進歩を遂げたが、地球の営みは未解明のままである。科学の限界を語ることは科学を貶めることにはならず、むしろその逆だ。人々は東日本大震災の惨禍を回避できなかったことを忘れてはいない。

ただ、南海トラフで起きる巨大地震は古文書の発掘や地層調査から一定の「予測」が公表されている。白鳳地震(684年)以来、繰り返しマグニチュード(M)8級の巨大地震と大津波に襲われているためであり、M8~9クラスの地震が起きる確率は30年以内に60~70%という。今生まれる子どもたちが結婚適齢期になるかどうかという近未来である。想定される地震は最悪の場合、30都府県で計32万人余の命を奪い、避難者は950万人に及ぶという。

東日本大震災では多くの社寺が避難者を受け入れ、組織的なネットワークを生かした救援活動が高く評価された。想像を絶する不幸な体験に苦しむ避難者の心を癒やす働きもした。現在、全国の自治体が指定する民間施設の避難所として私立学校や福祉施設に次いで神社・寺院が多いのも、理由のあることである。

だが、南海トラフ地震の想定被害は複数の大都市圏が関係するだけに桁違いに甚大だ。上述の最終報告では、膨大な避難者の受け入れに優先順位をつけるトリアージ(選別)の概念が示されたが、宗教者が人を選別できるものなのか。それも含め、地震の予知が「困難」という現実は宗教界にも難しい課題を突き付けている。

ところで湯川博士の前記の文章は、実は関西に研究用原子炉の設置が計画された際、科学者らが「危険は絶対ない」と主張するのに対し、博士が独自に慎重な判断の必要を訴えたものだった。歴史は博士に味方するが、原発を推進する集団だけは今もなお、科学の絶対性を譲らないようである。