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強調しておきたい慈悲の今日的意義

2013年7月11日付 中外日報(社説)

「生保」を「ナマポ」と読む。一部の集団が生活保護受給者を攻撃する造語だそうだ。特定の国や民族に敵意をむき出す憎悪表現や行動が、最近は社会的な弱者にも向かう。不況と格差の拡大などで世に鬱積する不満や閉塞感のはけ口を、物言えぬ弱者に求めているような構図である。

他者への思いやりの心がどんどん薄れていく感のある時代の空気は、高齢化と財源難で社会保障切り下げに腐心する国には好都合かもしれない。8月から「最後のセーフティーネット」の生活保護費(生活扶助基準額)が3年かけて引き下げられる。特に子育て世帯に響き、夫婦と子の4人家庭で2万円減の20万2千円に。家賃などを除くと4人ぎりぎりの生活費はより厳しくなろう。だがネット上などでの「ナマポ」攻撃は収まる気配がなく、生活保護費を浪費している人を見つけたら条例で市役所に通報する責務を市民に課す自治体も現れた。受給者への監視網は広がる気配で「差別、偏見を助長する」という懸念も聞かれる。

保護費の削減額は740億円だが、最低賃金や就学援助、住民税非課税基準などとも連動するため低所得層への影響は大きい。一方で、会計検査院の検査報告では国の事業の無駄遣いなど不適正経理は年間5296億円にも上る(平成23年度)。国の役人が少し税金の節約に努めれば、爪に火をともす生活をさらに窮地に追い込まなくても済むはずなのに、なぜかその方には関心が向かない。

生活保護バッシングの一つの要因は不正受給だが、その額は173億円で生活保護費全体のわずか0・5%(同年度)。もう一つ、保護支給額が低所得者の生活費を平均1割余超えているというが、そもそも日本の貧困率(14・9%)はかなり高く、主要先進国では米国に次いで2番目。しかも徐々に上昇し、本来なら保護対象なのに受給していない世帯が受給者の数倍に上るともいわれる。日弁連によると、保護費がGDPに占める割合は0・5%でOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の7分の1にすぎない。餓死や孤立死が絶えず、受給者数(約216万人)が過去最多を更新し続ける背景がそこにある。

そんな中、いずれ生活保護法の改正で親族の扶養義務など受給の関門が強化され、役所窓口で保護申請が門前払いされるケースが増えることも予想される。

冒頭の話だが、理不尽に尊厳が貶められる人々の存在に無関心な世は不健全だ。慈悲という言葉にもっと光を当てねばならない。