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厳しさ増す農業界 担い手育成が課題

2013年7月23日付 中外日報(社説)

日本の農業をめぐる環境が厳しさを増している。6月に発表された平成24年度の農業白書は、現状を「構造改革の大きな節目」とした。農家の高齢化や耕作放棄地の増加を受け、新規就農者の育成・確保を課題に挙げている。

農業従事者の60%が65歳以上で、働き盛りの40代以下は10%と世代間のアンバランスが激しい。特に稲作は最も高齢化が進み、平均年齢は69・9歳となっている。

5年前のリーマンショック以降、厳しい雇用情勢を受けて、若者らが農業にチャレンジする「農業ブーム」が起こった。しかしブームは長続きしなかった。白書では新規就農者の約3割は生計が安定しないために5年以内に離農するとしている。

「酵素農法」を指導・実践する京都府亀岡市の愛善みずほ会は、3年前から新規就農者の支援事業を始めた。現在の研修生は2、3期生の5人。2年1カ月の間に、農業の基礎から専門的な知識・技術、農業経営の実際までを学ぶ。「終わったら本当の農家になれるよう」な徹底した指導が特徴。事業としては赤字だが「農の営みを若い世代に継承していくことが使命」と古瀬忠・事業部長は言う。

大学でスポーツ医学を学んだ神原哲士さん(29)は「医食同源」の考えから食の重要性を認識し、研修生になった。「農業は自然科学の集大成。やればやるほど視野が広がり、これほど誇りを持てる仕事はない。農業を理論立てて説明できる農家になりたい」と夢を膨らませる。

古瀬氏は若者が農業に定着しない理由を、本人の心構えの問題とともに「人材育成のシステムがないから」とみる。行政は農家に「丸投げ」し、農家は自らの農作業に忙しく、そもそも育成のノウハウを持ち合わせていない。

新たな担い手が現れない産業は必然的に衰退する。政府は農業分野の規制緩和として、農地法で制限されている企業の農地所有の解禁を検討している。農業活性化の即効薬として一定の効果は期待されるが、不採算時の安易な撤退を懸念する声は根強い。農業が利潤の追求を第一とする資本の論理と相いれるのか、なお慎重な議論が望まれる。

農村の疲弊は地方の活力をそぎ、国土の荒廃を加速させる。大本の関連団体である愛善みずほ会や「自然農法」の普及を目指す新宗教系団体のような直接的な支援でなくても、地産地消の推進など身近なレベルで日本の農業を守る取り組みは進められるはずだ。宗教界の議論を期待したい。