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原爆忌を過ぎても続く広島関連報道

2013年9月3日付 中外日報(社説)

8月の半ばを過ぎると、新聞紙上から「平和」の記事が消えるとされてきたが、今年はヒロシマに関わる話題3件が尾を引いた形である。広島平和記念資料館(原爆資料館)の被爆人形と『はだしのゲン』と千羽鶴である。

7月25日付本欄で紹介したように、原爆資料館には昭和48(1973)年以来、被爆直後の母子をかたどる3体の人形が展示され、迫真的な姿が来館者に強い印象を与え続けてきた。

しかし館側は、人形は「作りもの」だから近く撤去し、遺品・遺物などの「実物展示」に徹するとの方針を固めている。それも一つの考え方ではあろう。だが本欄での紹介以後、撤去反対の声が盛り上がり、人形保存論を支持する形の報道が相次いだ。

そこへ山陰地方の一部教育委員会事務局が、小・中学校の学校図書館所蔵の『はだしのゲン』を閉架扱いするよう要請していたことが伝えられた。昨年死去した漫画家の中沢啓治さんが、広島での自身の被爆体験に基づいて描いたもので、原爆の悲惨さを端的に表現したと評価されている。

教委事務局はこの漫画が児童・生徒に与える印象の強さに配慮したようだが、教育委員全員による臨時会議で、閲覧を制限する要請を撤回して、各校の判断に任せることが決まった。湯崎英彦・広島県知事は、多くの小・中学生に読ませたいと語っている。

昭和50年代から平成の初めにかけて、広島で組織的な被爆体験証言活動をしていた「ヒロシマを語る会」の原廣司さんは、広島へ平和学習に来る小・中学校の教師に注文していた。『はだしのゲン』はヒロシマ学習の後で読ませてください、と。事前に読んで今も廃虚のままと信じて訪れ、近代的な街並みを見ると「なあんだ」と違和感を抱くことになりかねない、というのだ。

千羽鶴の起源は、広島平和記念公園の「原爆の子の像」のモデルとされる佐々木禎子さんが、鶴を千羽折ったら原爆症が治ると信じて折り続けたとの言い伝えが有力だ。近畿のある図書館では「広島へ捧げる折り鶴の提供を」と呼び掛けていた。

千羽鶴を捧げる心と行為は美しいが、平和記念公園を管理する広島市当局は、今年も膨大な千羽鶴の処理に困っている。そのことに思いを致す人は少ない。

平和を祈るヒロシマの心を広く伝えるには、きれいごとに終始せず、効果を考えた適切な訴えをすることも必要ではないだろうか。決意新たに声を上げ続けたい。