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特定秘密保護法案と知る権利制約の危険

2013年9月10日付 中外日報(社説)

政府が今秋の臨時国会に「特定秘密保護法案」を提出する。国の機密を漏らした国家公務員らの処罰を強化することが目的。「外交」「防衛」「外国の利益を図る目的の安全脅威活動の防止」「テロ活動の防止」の4分野で指定された「特定秘密」を漏らした国家公務員らは最長10年の懲役。「特定秘密」を得るため、人をだまし、暴行を加え、脅迫するなどの行為をした民間人も処罰される。

政府関係者は「米国などの信頼を得るため」と言うが、法案では「特定秘密」の指定は所管省庁の大臣らの権限とされる。政治的判断で本来は隠す必要のないことまでも「特定秘密」とされ、国民の知る権利が侵害されるのでは、との危惧が広がっている。

今年の夏は記録的な猛暑となり、熱中症対策のため毎日の天気予報チェックが欠かせなかった。今や生活情報として定着している天気予報だが、戦時中には3年8カ月にわたり新聞やラジオから天気予報が姿を消した。

気象情報は航空作戦を行う上での重要な情報とされ、「軍用資源秘密保護法」で規制の対象となった。自然災害の多いわが国で国民が気象情報を知ることができないのは致命的だ。戦時中にはその影響で台風などによる人的被害が一層拡大したとの説もある。

歴代内閣が封印してきた集団的自衛権の行使に積極的な安倍晋三首相の政治姿勢や、戦争放棄をうたった第9条を改定、自衛権を明確にして国防軍の創設を目指す巨大与党・自民党の憲法改正草案など、政治情勢はかなりきな臭い。

「自衛のため」と放たれた一発の銃弾が戦争を引き起こしたこともある。周辺諸国の出方次第では、また「戦争」に巻き込まれないとも限らない。そうなれば「特定秘密」の範囲は拡大され、「国の安全のため」に国民の知る権利が制約を受けかねない。

知る権利は、最も重要な現代的人権と認識されており、その制限は信教の自由など基本的人権の侵害に発展する恐れもはらむ。秘密保護法案は憲法9条や信教の自由を定める20条などと同様に宗教界にとっても看過できない重大な問題である。

戦時中の「軍用資源秘密保護法」や、沖縄返還交渉をめぐる外務省機密漏洩事件などで明らかなように、国家の機密・秘密が国民の利益や権利と相いれない場合が多いのは歴史が証明している。法案審議に当たり政府は、国民の権利を犠牲にしてまで守らねばならない秘密とは一体何なのかをはっきりと示すべきだ。