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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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暗い時代の記憶を蘇らせる秘密法案

2013年11月23日付 中外日報(社説)

「かきねの かきねの まがりかど」で始まる唱歌「たきび」が、NHKラジオの幼児向け歌番組で初放送されたのは「真珠湾」翌日の昭和16年12月9日だった。3日連続で放送予定だったが、2日で打ち切られた。軍部に「たき火は敵機の攻撃目標になる」と警告されたためという。『唱歌・童謡ものがたり』(読売新聞文化部著、岩波書店刊)による。

もとより軍部のクレームが噴飯ものなのは同書も記す通りだが、いくら噴飯ものでも、また横暴なことでも「国防のため」と言えば大真面目でまかり通った暗黒の歴史が日本にはある。今、国論を二分する特定秘密保護法案も、同じ轍への一歩を踏み出しかねない危険性を感じる。

法曹界、学者・文化人グループ、メディア関係団体や国際協力NGOなどに幅広く反対運動が広がり始めたのはその表れだ。翻って、戦前に苦い経験を持つ宗教界の動きが乏しいように見えるのが気にかかる。

この法案は国民の「知る権利」を脅かすと、以前にこの欄でも指摘したが、その後国会の審議を通して一層疑問が深まってきた。

最も深刻なのは厳罰で守ろうとする「特定秘密」が、時の政権や官僚の裁量で恣意的に決められ、国会議員もアクセスが困難な仕組みにある。何が処罰を受ける国の秘密なのか不分明な社会の怖さは戦争を知る世代は骨身に染みている。野党要求で微修正はされても「よらしむべし、知らしむべからず」という古い言葉をも想起させる法案の思想は変わらない。秘密が増え官民間の情報格差が拡大すれば官僚機構の腐敗も招こう。だが、問題はそれだけではない。

自民党が昨年夏に決めた国家安全保障基本法案(概要)の第3条に「国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」との文章がある。教育をはじめ政府のあらゆる政策で「安全保障」を優先課題に置くと読める。他の条項で秘密保護法の制定も明記し、特定秘密保護法案と密接に関係する。そればかりか憲法9条の改変を経ず集団的自衛権行使を可能にすると危惧されているいわく付きの法案である。

だが、安倍政権はこれを早ければ来年の通常国会に提出するともいわれ、国防への執着心の強さをうかがわせて不気味でさえある。

特定秘密保護法案は、各メディアの世論調査でも「反対」の方が多い。歴史を振り返れば、おのずから出てくる答えなのであろう。