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乳児の死亡率が低いキューバの医療事情

2014年1月23日付 中外日報(社説)

東南アジアの仏教国で、1980年代になって"鎖国"を解き、外国人観光客を受け入れるようになった国があった。経済の発展が遅れ、首都の空港の施設は、日本の鉄道のローカル線の駅舎を連想させるほどだった。仏跡の巡拝はもっぱら、小さな馬の引く馬車が使われていた。

日本人巡拝団の人々は、市街を走る車を見て驚いた。日本から輸入された中古車の車体に、元の所有者である日本の企業名がそのまま残されていた。

ガイドが説明した。「塗り替えて日本の文字を消すと、手を加えねばならぬ粗悪車という印象を与えます。塗り替えないことが、良い車であることの証明になっているのです」と。

最近のその国の写真では、経済発展と共に新車が増え、日本文字を記した中古車は、もはや見られなくなった。

なぜその国の車事情を思い出したかというと、最近の新聞で「キューバ、新車購入自由化へ」という記事を見たからだ。

同国は59年の革命後、米国の経済制裁を受け、極貧状態にある。外貨が足りないから車の売買が禁止され、国民は50年代製造の古い車を何度も修理して乗り継いできた。だが古い車は大気汚染の原因になる。そこで近く、新車購入禁止令を一部緩和することを検討しているという。

この記事と前後して、キューバの医療事情を伝える情報に数件、出合った。一つは、埼玉県の本田宏医師の新聞寄稿である。キューバの夜の街は停電と見間違えるほど暗い。だが国民は誰でも無料で医師の治療を受けられる。乳児死亡率の低さは世界のトップクラス。米国より低い。

貧しい国だからこそ、国民の健康を大切にすることを最重要課題としている。その一方で、世界の災害地や医師不足地域へは、進んで医療チームを派遣する。

本田説を裏付けるような手記をある出版社のPR誌で読んだ。筆者は津田塾大の三砂ちづる教授だ。三砂教授は、冷戦時代には東側諸国で、冷戦後は医療事情の悪い国で、何度もキューバの医療スタッフに出会った。

一口で言うとキューバの医師たちは、他国の一部の医師のように権威ぶることなく、明るく、話しやすくて"実にいい奴"だったと記している。

"貧しい国"では福祉が行き届かない、が常識とされる中でのキューバ称賛論が注目される。より豊かな国々で、福祉が軽視される例が見られるだけに……。