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時代の危機を感じるNHK首脳の人模様

2014年3月1日付 中外日報(社説)

国営放送といえば、すぐ北朝鮮や中国のメディアが思い浮かぶ。一方、公共放送のイメージはいまひとつ定かでないが、公共や公共性の概念を駅のコンコースに例えると分かりやすい。立場や考え方は違えども人それぞれに幸せを求め行き交う開かれた空間がコンコースであり、何か邪悪な意図で人々の自由な行動を妨げる者は排除されねばならない。公共放送も同じことで、広く人々を幸せに導く知識・情報の伝達が責務であり、特定の政治勢力が横車を押すような愚は厳に慎まねばならない。民主主義社会を支えるメディアであり、国営放送とは理念が異なる。

その視点から見て公共放送NHKの籾井勝人会長と最高意思決定機関である経営委員会の委員2人による昨今の言動は、深い不信感を抱かせる。現に欧米諸国のメディアのNHK批判は厳しく、ドイツ紙はNHKを国営放送と決め付けた上、「日本の国営放送を中国的状況が支配している」とまで酷評している。ケネディ・駐日米国大使がNHKの取材を拒む事態も尋常なことではない。

元従軍慰安婦の人格をおとしめる。歴史の事実を否定、東京裁判は拒否し、思想の違う相手を「人間のくず」と呼ぶ。言論テロを称賛するような論文を発表する。批判を招く首脳陣の言動は多岐にわたるが、会長発言には公共放送トップの自覚を疑わせるものもあった。日本の知性を代表する立場だが、心に響く論理も言葉の修辞もまるで抜け落ちた品性を欠く言説に筆者は寒気を覚えた。籾井会長は主要な発言を撤回したが、本音はどうなのか不審な言動が続く。

発端は昨秋、安倍晋三首相が問題発言の2人を含む気脈の通じた"お友達"4人を新たな経営委員に送り込んだことにあった。安倍色が強くなった経営委員会で昨年末、籾井会長が選ばれた。一連の人事には「NHK報道は偏向している」という政権側の不満が強く働いていたともいう。ところが日本新聞協会の調査では「中立・公正」などの指標でNHKへの国民の信頼感は常に新聞を上回る。偏っているのは政権の方である。

当事者は放送内容に影響はないと言うが、組織内が上の顔色を見て委縮することは避けられまい。懸念するのは彼ら首脳陣の言動が国権主義色の強い安倍首相におもねり、あるいは同じ方向を向いているように見えることだ。

国の破局は言論統制に始まるという。某紙の川柳欄に「戦争を知るかもしれぬ子供たち」というのがあったが、戦争はもっと足早に近づいているのかもしれない。