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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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おもてなしの模範を宗教界が示す好機だ

2014年3月6日付 中外日報(社説)

2020年のオリンピックとパラリンピックの東京誘致が成功したのは「お・も・て・な・し」精神を強調する呼び掛けが一つの要因になったといわれている。旅の客をもてなすことの大切さは、旧約聖書創世記のアブラハムの物語にも説かれており、人類共通の美徳であろう。

ところでその、おもてなし精神の現実はどうなっているであろうか。実業家で、大学の教壇にも立つ夏野剛さんが、先日の新聞に寄稿していた。東京で伝統のある大ホテルに泊まり、館内の商店で買い物をした。クレジットカードで払おうとしたら、店員から「ウチは現金払いです」と言って拒否された、というのだ。

日本人である夏野さんが当惑したのだから、通貨を交換しなければならない外国人旅行客は、もっと困るだろう。ホテルの経営者はこの事実を知っているだろうか、と指摘していた。

先日A市へ旅行した人が、帰途は空路を利用することにした。A空港へは、大手のP航空しか就航していない。出発前にP航空の関西の支店で航空券を買った。係員が「お買い物サービス券」をくれた。「A空港には系列会社の売店があり、お土産が割引価格で買えます」と説明された。

その人は、A市内では買い物をせず、リムジンバスで空港へ着いた。だが売店にはシャッターが下りている。空港職員に聞くと、経営不振のため2年前に閉店したという。便数の少ない空港では商売にならないのだろう。その情報がP航空の関西の支店には届いていなかったのだ。

大ホテルと、館内の商店。P航空と、空港の売店。いずれも経営は別々であり、直接の責任はないといえる。しかし、利用する客にとっては、サービスは一体だ。両者の息が合ってこそ、おもてなし精神が成り立つ。

中世、浄土真宗の教線を飛躍的に拡大した蓮如上人は、当時の民衆に分かりやすい御文章(御文)で教えを説いた。遠国から訪れる門徒と平座で語り合い、冬は熱い酒、夏は冷やした酒を勧めて、旅の疲れをねぎらった。まさに、おもてなしの原点だ。

寺院の後継者たちに、接遇のコツを体得させるため本山の檀信徒会館勤務を奨励する宗派がある。本山の所在地へ旅行する檀信徒に対し「連絡しておきます。本山へお参りして、文化財を拝観させていただきなさい」と声を掛ける住職がいる。宗教者が、おもてなし精神の模範を示す機会のさらに広がることを期待したい。