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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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隣国との緊張 草の根交流の力見直せ

2014年7月30日付 中外日報(社説)

達磨大師の面壁9年で知られる嵩山少林寺は、中国の河南省の古刹である。7世紀にインドに渡り、多くの経典を持ち帰った玄奘も、晩年は嵩山に行くことを望んだが、皇帝がそれを許さなかったと伝えられている。

その少林寺は一時期僧侶も少なく、1970年代末には存亡の危機に瀕した。だが現在は多くの僧侶が修行に励んでいる。周囲には武術学校が立ち並び、観光客も多くなった。きっかけは82年に公開された映画「少林寺」である。主演の李連杰(ジェット・リー)は中国全国武術大会で5年連続の総合優勝をした武術の腕前で、迫真の演技となった。これが世界的に大ヒットし、中国国内では拳法を学ぼうとする若者が急増した。嵩山少林寺への関心も高まった。

この映画の製作を支援したのが香川県多度津町に本部を持つ少林寺拳法連盟である。創始者の宗道臣氏は戦時中に中国大陸で拳法を学んだが、戦後は中国と日本との友好に大きな関心を寄せ続けた。

宗道臣の娘として後継者となったのが、現在少林寺拳法グループ総裁の宗由貴氏である。同氏も、父の遺志を継ぎ、日中友好に力を注いでいる。少林寺の壁画の修復に取り組み、2002年には少林寺希望小学校を設立した。河南省にある鄭州大学には放送大学の協力を得て約3万冊の日本語の書籍を寄贈した。これは「宗道臣文庫」となっている。

今年5月、宗総裁は東京大学少林寺拳法部OB会の訪中団と共に、鄭州大学や嵩山少林寺を訪問したが、同寺の方丈である釋永信氏と会談し、河南省の各地で歓迎を受けた。互いの友好を確認したとされる。

こうした草の根的な交流は、政治家同士のともすれば相手を攻撃し、敵視するような態度が目立つ昨今において、貴重な役割を果たすことになる。友好を目指す交流には中国側関係者も非常な期待を寄せる。仏教界でもさまざまな縁に基づく交流がなされているが、東アジアにおける相互関係が、どちらかといえば緊張を高めるような方向に動いているときは、こうした活動に広く光を当てることが大事になってくる。

友好を目指す多くの草の根的な交流が、政治家の一言やマスメディアの煽るような報道によって、台無しに近い状態にされたという例は数多い。そのことに虚しい思いを抱いた人も少なくない。だが、こうした試みは微力のように見えても、実はそうではない。細くとも長く続けられるものは、意外な力を秘めていることに思いを致すべきである。