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広がる遺伝子検査 危うさへの議論深めよ

2014年9月5日付 中外日報(社説)

血液や唾液の遺伝子を解析し、病気のかかりやすさや体質などを判定する個人向けの遺伝子検査ビジネスが拡大している。検査結果をうまく利用すれば生活習慣病の予防や健康管理に役立つ一方、結果によってはその人や血縁者の生き方にも大きな影響を与えかねない。規制の在り方も含め社会での議論を深めていく必要がある。

遺伝子検査は昨年、米国人女優アンジェリーナ・ジョリーさんが検査結果をもとに乳がん予防のため乳房を切除したことで注目を集めた。検査機器の精度の向上で検査期間が短縮され、費用は安くなり、日本でもこの分野への企業の新規参入が相次いでいる。今夏にはヤフーやディー・エヌ・エー(DeNA)などのインターネット企業が参入を表明した。

DeNAが8月に開始したサービス「マイコード」は、インターネットで検査キットを取り寄せ、唾液を専用容器に入れて送り返すだけだ。2~3週間後に解析結果がネット上で見られる。費用は9800円~2万9800円(税別)の3通りで、30~282の検査項目数がある。がんなどの病気や体質について「あなたの発症のしやすさは日本人平均の1・3倍」などと示され、生活改善のアドバイスもある。

簡易で身近になった遺伝子検査だが、検査の限界や遺伝情報の取り扱いなど課題も多い。

検査結果が業者によって異なったり、中には科学的根拠が希薄なケースも指摘されている。病気は環境など多くの因子が影響して引き起こされ、遺伝子との関係が未解明な点も少なくない。

遺伝情報は究極の個人情報であり、流出や目的外の利用がないよう厳格な保護が求められるが、管理についてのルールは未整備だ。今後、遺伝情報の利用が進み、教育や雇用、保険などでの差別を危惧する声もある。米国など一部の国では、こうした差別の禁止など何らかの法規制を設けている。

経済産業省は検査ビジネスの適正化に向けた研究会をつくり、4月に報告書をまとめた。研究会では検査の質の確保など課題が幾つか提起されたが、法規制については賛否が分かれた。同省は研究会を続け年内にもルールをまとめるとしているが、産業育成の大義名分の下、法規制には及び腰だ。

海外からは予想外の検査結果に苦悩する人々や、遺伝子を操作して親の理想の子どもを得ようとする、いわゆるデザイナーベビーの問題など、検査の普及に潜む危うさも伝えられる。検査がもたらす未来社会をどう展望するのか。宗教界でも議論を深めてほしい。