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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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戦後70年の節目に思う 「戦争は罪悪」を忘れるな

2015年1月9日付 中外日報(社説)

兵庫県姫路市の天台宗書写山圓教寺で今年の年明けを期して「新春夢の書」があり、大樹孝啓住職が今年一年の希望を表す漢字として「節」と揮毫した。今年は戦後70年、阪神・淡路大震災から20年の節目の年に当たり、これが今年の漢字として「節」が選ばれた理由の一つだ。

三重県伊勢市で5日、年頭の記者会見に臨んだ安倍晋三首相も戦後70年に言及し、今年の終戦記念日に合わせ発表する首相談話に、先の大戦への反省などを書き込む、と述べた。そして、アジア諸国に対する植民地支配と侵略への反省、謝罪を表明した1995年の村山富市首相の談話(村山談話)を含めた、歴代内閣の歴史認識に関する立場を全体として引き継いでいく姿勢を表明した。

その一方で同首相は、日本が戦争に巻き込まれる恐れがある、として反対論が根強い集団的自衛権行使容認を認めた昨年の閣議決定を踏まえ、安全保障関連法案の成立にも意欲を示した。先の大戦への反省に言及しながら、その反省の上に立った憲法9条の平和主義を否定しかねない集団的自衛権行使容認に向けて法整備に踏み込もうとする安倍首相の姿勢には、疑問を感じざるを得ない。

昨年末、長崎と沖縄で戦争の悲惨さ、残酷さを語り継いできた二人の語り部が亡くなった。長崎で被爆した片岡ツヨさん(享年93歳)と、沖縄戦に「ひめゆり学徒隊」として動員された宮城喜久子さん(同86歳)だ。戦後生まれが1億人を超え、総人口に占める割合は約80%に達しており、実体験としての戦争の記憶の風化は今後も進んでいく。

そんな中で、憲法9条に基づく「消極的平和主義」では、激動する現代の国際社会において平和構築に十分な貢献を果たすことができないとし、積極的に行動を起こすことに価値を求める、安倍首相の唱える「積極的平和主義」のような考え方が台頭してくるのも、ある意味では時代の流れかもしれない。

しかし、国民の知る権利や表現の自由を侵害しかねない秘密保護法が施行された今、こうした考えの下で「戦争のできる国」づくりが進められようとしているのではないか、と不安を抱く人も少なくない。

終戦間もない1945年10月に亡くなった真宗大谷派の竹中彰元氏は戦前・戦中に反戦を唱えて禁固刑にされた。為政者の勇ましい掛け声ばかりが耳につくが、戦後70年の節目を機に、「戦争は罪悪」と戦争の本質を見据えた一僧侶の声にも改めて耳を向けたい。