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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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歴史の経験忘れるな 報復が自主独立の証しか

2015年3月4日付 中外日報(社説)

「イスラーム国」に人質にされた2人の日本人が殺害されたのは悲しい出来事だった。だが、これを機会に海外の日本人を守るために海外での戦闘ができるような体制にするという動きがある。第2次世界大戦後、平和主義国家としての道を歩んできた日本の姿勢を覆しかねない危うい政治動向だ。

これは現行憲法第9条の精神に反するだけではない。そもそもむやみに侵略を広げ、勝ち目のない無謀な戦争に向かった過去を省みて、軍国主義から遠ざかろうとしてきた戦後日本の歩みそのものを否定しかねないものだ。安倍首相は人質事件について、「イスラーム国」側に「その罪を償わせる」と述べた。これについて、元自民党幹事長の古賀誠氏は「報復をにおわせるような発言」であり、平和憲法の精神に反すると批判している(『週刊朝日』3月6日号)。

他方、『産経新聞』2月7日付の「産経抄」は、「仇をとってやらねばならぬ、というのは人間として当たり前の話である」と述べている。そして、憲法に「『平和を愛する諸国民の公正と信義』を信頼して」とあるのを指して、「この一点だけでも現行憲法の世界観が、薄っぺらく、自主独立の精神から遠く離れていることがよくわかる」と記している。

ここで思い起こさせられるのは、9・11アメリカ同時テロ事件後にブッシュ大統領がアフガニスタンに報復戦争をすることを唱えた時の日本の宗教者の反応である。神道、仏教、キリスト教、新宗教の五つの連合組織(神社本庁、全日本仏教会、教派神道連合会、日本キリスト教連合会、新日本宗教団体連合会)がさらに連合して構成されている日本宗教連盟では、約1カ月後の10月16日に理事長である白柳誠一枢機卿と理事全員の名前で、「戦闘によらない解決を求める声明」を発表した。

こうした日本の宗教界の平和主義的な姿勢は、満州事変以来の中国大陸、アジア諸国、そして欧米諸国に対する戦争の経験とそれに対する深い反省を踏まえた現行憲法の精神を反映している。そして、それはまた近代に歴史の経験によるとともに、日本の精神的伝統にふさわしいものとも見なされてきたのだった。

政治家の間には、軍国主義的な過去に対する郷愁を持ち、そこに「自主独立の精神」を持った「強い国家」を見て、そこへ帰ろうとする考え方が広まっている。しかし、多くの国民はこれに賛同しているわけではない。平和を求めてきた日本の宗教界は、こうした政治動向を注視していく必要があるだろう。