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性的マイノリティー 根本的問題の理解を

2015年5月20日付 中外日報(社説)

今年3月に東京都渋谷区は「同性パートナー条例」を可決した。正式には「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」という少し長い名称になる。

この条例は男女の平等をうたうとともに、人間の性的指向の多様性を認め、性的少数者も他の人と同様の権利を認めようとする精神に基づいていると理解される。今回の渋谷区長選挙でもこの条例を支持する候補者が当選した。

「同性パートナー」という名称故に、同性婚を認める条例と誤解した人もいるようだが、同性婚の手続きを示したものではない。渋谷区営住宅への同性同士での入居を認めるとか、渋谷区民や事業者に、証明書に基づく同性同士の関係を尊重するように求めることができるといった内容である。つまりLGBTと総称されるような性的マイノリティーでも、渋谷区で暮らしやすくなるようにという趣旨である。

ところが保守系メディアの一部は、この条例に対し極めて強い警戒をあらわにしている。つまるところ同性婚は日本の伝統的家族制度を壊すという主張のようである。少子化が進むなどという的外れに近い意見もある。

こうした論調は、最近進んできた性的少数者に関する科学的研究をまったく考慮していないのが特徴である。ここで言われる伝統的家族制度というのが何を指しているのか、おおよそは想像がつく。だが、日本の歴史を少しでも学んだ人なら、日本の家族制度も時代によって大きく変わってきたことは常識の部類である。

男女の対が家族をつくるときの基本になるという考えは、それが大半の人にとり疑問を抱きようのない自然なことに感じられるという事実によっている。しかし、最近の研究では、同性愛(ゲイ、レズビアン)あるいは性同一性障害といった人は、遺伝子的要因や環境要因が複雑に関係してそうなったという理解が進んでいる。

つまり伝統的な家族観への反抗や抵抗といった類ではなく、本人さえ制御が難しい心の動きができてしまうのである。当人が深い心理的な傷を負いがちなのも、ここに一つの理由がある。イデオロギーや価値観だけではない、生物としての人間に作用する複雑な影響力というものを思いやるべきである。

宗教者としては人間の心の悩みや苦しみに最も敏感であってしかるべきであろう。理念や建前にこだわるあまり、結果的に極めて鈍感な対応を示したなら、宗教への懐疑を増長させるのは目に見えている。