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寺院の世襲問題 宗門活性化の配慮必要

2015年7月29日付 中外日報(社説)

もう何年も前になるが、先代住職が宗務総長を務めたある有力寺院が、親子間の住職継承に厳しい条件を設ける寺院規則改正を試みた。脱「世襲」の方向を規則で明記したもので、宗派でも特異な決断として注目された。

真宗系以外の寺の世襲化は、一般論として肯定的には語られないが、実際は複雑な問題をはらむ。経済的基盤が弱く、住職が兼職して寺族の生活を支えなければならないような寺では、後継ぎの候補は見つけにくい。仏教的環境で育てた息子、あるいは娘の婿が最有力の候補であり、寺檀関係が円滑なら、檀徒側も幼い頃から知っている寺の子が住職を継いでくれるのを積極的に期待する。

単純化すればこうした期待の中で行われる世襲が非常に多いだろう。実は冒頭に例を引いた寺も、世襲を制限する寺院規則改正は、檀徒の反対で流れている。世襲というと寺があたかも住職の家の財産のようになることを思い浮かべてしまいがちだが、こうした圧力もあるのだ。

他方、歴史的に地域の中心となってきたような有力寺院では事情が異なる。有力寺院の世襲は宗門内に特権的な階層を生み出す恐れもある。旧・本末関係がいまも上下関係の要素として多少の力を持って残っている場合、問題はさらに微妙だろう。

地域や宗門全体の中で重要な役割を果たすことが期待される寺院なら、周囲の目も厳しく、世襲の問題性は露呈しやすい。住職には、ふさわしい能力、適性が求められる。むろん、血を分けた子息が最適任者という場合もあろうが、世襲を前提とすれば候補を選ぶ範囲を著しく狭めることになるのは言うまでもない。

1872(明治5)年の太政官布告で公然化した僧侶の妻帯。宗旨上の根拠がない宗派で、世襲はその後に始まったとされるが、始まりの時期はばらばらで、まだ2代目というような寺もある。一方で、経済的に余裕があっても子息の意思で後を継がせることを断念した寺の例も多い。経済的基盤が弱いと、子息に寺門護持の苦労を求めることになる。世襲の歴史はまだ100年余。現在進行形で、今後変化していく可能性もある。

臨済宗妙心寺派の河野太通・前管長は管長在任当時の宗議会で、宗門の活性化を進めるため、地方の中核となる寺の住職資格について提言したことがある。宗門内の階層分化を防ぎ、活性化を進めるため、寺院継承の在り方も自然の推移に任せず、宗門が必要不可欠なコントロールを施すのを怠るべきではないだろう。