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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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パリ同時多発テロ 歴史と現実、正しく見よ

2015年11月25日付 中外日報(社説)

パリでの同時多発テロは痛ましく、一般人を犠牲にする無差別の非道な暴力には断固とした対応が必要だ。同時に重要なのは、事は何もパリに限らないという点。世界を深く公正に見るべき宗教者には、特にその観点が大事だ。

欧米が言う「テロ」に限定しても、アジア、アフリカを含め世界中で起きており、100人規模の死者が出た事件も少なくない。インドネシア、パキスタンをはじめ各国で多くの人々が亡くなっているが、その報道はパリの事件とは比べものにならないほど小さい。一方、強国が他国の国境を侵し爆撃や強引な暗殺攻撃をする「対テロ戦争」でも、世界の各地で女性や子供を含む住民が巻き添えになり多大な犠牲者を出しているが、やはり今回ほどの報道はない。

「知らずに」無視し、一方的な見方で冷静さを失うことは正義ではない。キャスター・評論家の乙武洋匡さんがツイッターで「『国際社会は一致団結して、このテロに立ち向かうべきだ』と言うが、このテロを起こした犯行グループも含めて“国際社会”なのではないだろうか。…国際社会から孤立させることが、本当に平和へと続く道なのだろうか」と発信したところ、逆に猛反発もあったという。

その後に「国旗」が街を埋め尽くした光景が共通する2001年の米国でのテロについて、「9・11で世界が変わった」などという主張があったが、「変わった」のは、全世界に強力な軍事的影響力を行使してきたアメリカが自国内への攻撃に衝撃を受け、内外に一層強硬な治安管理を押し付けるようになったこと。世界の途上国での貧困や抑圧、人々の窮状は、以前も以後も何も変わっていない。

中でも中東は、欧州列強が第1次世界大戦時にサイクス・ピコ協定によって勝手に地域を分割し、詐術まで使って支配してきた百年の暗い歴史、憎悪の連鎖がある。パリ事件があった11月13日は、1918年に仏・英国がオスマン帝国の首都を攻略した日なのだ。

この事件で三色旗を手に「ラ・マルセイエーズ」を歌う日本の人々は、イスラエルの攻撃でガザの児童らが死んだ時にパレスチナの四色旗を掲げ、米軍がアフガニスタンの病院を爆撃して子供の患者や医師ら多数が亡くなった際にアフガン国歌「ソルーデ・メッリーイェ」を歌っただろうか。米国務長官は「文明と野蛮との対決」と報復攻撃を呼び掛けるが、侵略を繰り返してきた列強の歴史、安全な米本土で基地へ通勤し、ゲームのようにドローン爆撃機で現地の“標的”を殺害する戦争行為が野蛮でないといえるのだろうか。