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創造的文化の危機 欲望が根底の経済論理

2016年4月8日付 中外日報(社説)

経営再建中の電機メーカー・シャープが、台湾の鴻海精密工業に買収されることになった。日本の電機大手が海外企業の傘下に入るのは初めての事態で、しかも土壇場で出資を大幅減額された。過剰な設備投資と経営判断の失敗によるものとされているが、独自の製品を生み出した「モノ作り」の老舗が“買いたたかれる”のを残念がる向きも多いだろう。それは、創意工夫をモットーに地域にも溶け込んできた同社の企業文化まで、営利第一の合理化で大なたにさらされることが危惧されるからだ。

もともと1915年に「早川式繰り出し鉛筆」つまりシャープペンシルを発明したのが社名の由来であることは有名だ。「ひげそり付きドライヤー」など独特な家電機器を開発し続け、そろばん付き電卓「ソロカル」はまだ電卓が珍しかった時代に計算結果を玉をはじいて確かめる、という発想だった。どこか人間くさい。

大阪出身の高橋興三・現社長も「おもろい家電」への挑戦を社員に呼び掛け、茶葉を粉末化して淹れる「お茶プレッソ」や「べつにあなたにほめてほしくて掃除したんじゃないんだからね」とアニメキャラクターの声で話す清掃ロボットなども発売した。後者は売れなかったが、「失敗してもええんや」と社長はメディアのインタビューに答えていた。そんな精神の延長線上に、一時は世界のトップをひた走った液晶技術もあった。

面白がってものを生み出す文化は、「伝説」となった松下やソニーの創業時から、町工場がパワーを結集する「下町ロケット」まで、この国に長く根付いている。ノーベル化学賞を受けた田中耕一さんも、勤め先である島津製作所のユニークな検査機器を創り出す伝統に育てられた。

そんな日本企業のつまずきは、ノートパソコンで世界市場を席巻したメーカーが莫大な利益を求めて事業拡大を続けた末に失速したように、営利第一の欲望によるものだった。リーマンショックによる需要低迷で価格が下落し、次々建てた工場での供給過剰がたたって坂道を転がり落ちたシャープも同様。奈良や広島の同社工場では、地元の祭りに社員が出たり、イベントの景品に電化製品を提供したりして親しまれていただけに、今回の事態を残念がる住民の声が新聞で紹介されていた。

鴻海は他社が開発した電気製品を代わって大量生産する事業で巨利を得てきた。欲望という経済の論理に対抗する価値観を示すべき宗教界のすぐ傍らでは、人間のいのちの営みである葬儀や法事にも企業が進出し市場化が進む。