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障害者差別解消法 バリアのない社会実現を

2016年7月22日付 中外日報(社説)

障害の有無に関わらず、全ての人が互いの人格と個性を尊重しながら共に生きる社会を目指す――障害者基本法のこうした理念の下、障害者差別解消法が4月に施行された。国の機関や民間の会社、団体、学校などに障害を理由とした差別を禁じ、障害者が生活する上での「社会的障壁」を取り除くよう求めている。個人の人権と尊厳を重んじるべき宗教界にも、しっかりとした対応が求められる。

同法は日本が2007年に署名した障害者権利条約を受け、13年6月に制定された。3年間の周知期間が設けられたが、認知度が高まったとは言い難い。

法の柱は「不当な差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」の二つ。障害を理由に参拝を拒否したり、特に必要がないのに付き添い人の同行を求めたりする行為が差別的取り扱いに当たる。本人を無視して介助者や付き添い人だけに話し掛けるのも同様だ。

合理的配慮とは、障害者の移動やコミュニケーションに伴うバリアを、過重な負担にならない範囲で取り除くことをいう。車いす利用者のためのスロープ設置や、手話、筆談での対応、点字資料の用意などがその例だ。合理的配慮は国の機関や自治体は義務だが、民間の宗教法人等は努力義務とした。この点については「不十分」との声があり、今後見直される可能性がある。

寺社のバリアフリー化は、この十数年でかなり前進したものの課題もある。車いす利用者で社会福祉研究者の頼尊恒信・真宗大谷派大阪教区教化センター主任研究員は「障害者の立場で言うと、使い勝手のいいものになっていないことも多い」と指摘する。

スロープを作るスペースがあるのに簡易昇降機を設置するケースなどだ。利用には人を呼び、鍵を開けて操作してもらう必要がある。停電になるとお手上げである。計画・設計段階で障害者が関わっていなかったり、予算が付いたからと施工業者に“丸投げ”したりすることなどが背景にあるという。

宗派教団は所属の寺社や職員に対し、啓発、教育を進め、法の趣旨に沿った施策を打ち出す必要があるだろう。

16年版障害者白書によると国内の障害者は約860万人。昨年版より70万人以上増えており、高齢化の進展で今後いっそうの増加が予想される。

障害者への配慮が進むと高齢者や親子連れなど健常者にも暮らしやすい社会になる。「障壁」のない社会の実現に向けて一人一人が法に対する理解を深めたい。