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死刑廃止「宣言」へ 日弁連の提起どう受け止める

2016年10月7日付 中外日報(社説)

組織として初めて「死刑廃止」の立場を明確に打ち出すのか。日本弁護士連合会(日弁連)は全国の会員が活動方針や重要テーマへの対応を決める7日の「人権擁護大会」(福井市)に「死刑廃止」宣言案を提出することを決め、採択を目指している。

宣言案は「国連犯罪防止・刑事司法会議」が日本で開かれる2020年までに死刑廃止を目指すとし、その上で代替案として終身刑の導入などを検討すべきだとしている。日弁連は11年にも死刑廃止に向けた宣言案を採択したが「全社会的議論を呼びかける」との内容にとどまっていた。

今回改めて採択を目指すのは、14年に袴田事件で再審開始決定が出たことや、死刑を廃止・停止した国が140カ国に上るなど死刑廃止の国際的な大きな流れが背景にある。宣言案には「死刑が執行されれば取り返しがつかない」冤罪被害の問題も盛り込まれる。

宣言案は出席者の過半数の賛成で採択されるが、慎重意見も少なくない。犯罪被害者支援に取り組む弁護士ら死刑に賛成する会員からは、「多数決で決めることなのか」「弁護士全員が死刑に反対と思われる」などと反発の声が上がる。

内閣府が昨年公表した調査では、死刑を「やむを得ない」とする回答が8割に上るなど、世論はなお死刑容認派が大勢だ。東京弁護士会が9月15日に開いた大会のプレシンポジウムで、地下鉄サリン事件遺族の高橋シズヱさんは「凶悪犯罪をどう抑止するのか」と死刑存置の立場を訴えた。

宗教界では日本カトリック・正義と平和協議会「死刑廃止を求める部会」が5月、伊勢志摩サミット開催を前に、「いのちと人権を守る姿勢を世界に示してほしい」と「死刑廃止を求める要請書」を安倍首相らに送った。同協議会や真宗大谷派、大本などは死刑執行時に反対声明を発表している。

これら3教団はじめ約20の団体等でつくる超宗派の「『死刑を止めよう』宗教者ネットワーク」は03年の発足以来、セミナー、集会の開催など地道な啓発を続けてきた。死刑の存廃について見解を表明している教団・宗派はまだ少数にとどまる。「死刑廃止」の輪をさらに広げることができるのか、今後の活動が注目される。

死刑制度をめぐっては加害者の更生、被害者遺族のケアなど賛否を超えて宗教者が取り組むべき課題は多い。日弁連は宣言が社会全体で議論を深めるきっかけになればと期待する。宗教界は宣言を正面から受け止め、新たな議論を喚起したい。