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児童虐待の悲劇 一人一人の意識が問われる

2016年11月30日付 中外日報(社説)

大阪・堺の男児が3年前から行方不明になり、両親が児童手当等の詐欺容疑で逮捕された事件は、傷害致死容疑等で両親が再逮捕された。父親が男児に日常的に虐待していた疑いが持たれている。

子供たちの命すら奪う児童虐待の悲劇が各地で繰り返されている。厚生労働省によると2015年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待件数は10万3260件で過去最多を更新した。1990年度の統計開始以来増え続け、初めて10万件を突破した。

児相に通報する全国共通ダイヤルを10桁から3桁(189番)にしたことや、事件報道などで虐待に対する国民の意識が高まったことが増加の要因だという。

虐待の内容で最も多いのが、暴言を浴びせたり、子供の前で配偶者や親族に暴力を振るったりする心理的虐待で、全体の47・2%を占める。以下、身体的虐待(27・7%)、ネグレクト(育児放棄、23・7%)、性的虐待(1・5%)と続く。

子供の前で振るう暴力は「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」と呼ばれる。近年は心理的虐待、とりわけこの面前DVの増加が顕著だ。虐待という意識はなくても、面前DVは子供の心に深い傷を負わせ、発育にも影響を与えることが指摘されている。配偶者への暴力が子供への暴力にエスカレートしたり、暴力を受けた母親が疲弊してネグレクトに至るケースもあり、注意が必要だ。

今年5月、児童福祉法、児童虐待防止法が改正され、ベテランの児童福祉司や専門知識を持った弁護士の配置を児相に義務付けるなど、児相の権限・体制が強化された。しかし10万件の虐待件数に対し、全国の児相の数は約200、対応する児童福祉司は約3千人で、増え続ける件数に追い付かないのが現状だ。

行政の対応とともに、国民一人一人が子供を見守る意識を持つことが虐待の早期発見と予防に欠かせない。そのための地道な啓発活動が大切だ。子供の救済とともに、虐待をする親たちのサポートも未然防止に必要だろう。

民間の啓発活動としてはNPO児童虐待防止全国ネットワークが運営する「オレンジリボン運動」が知られるが、宗教界の支援団体は全国日蓮宗女性教師の会などごく一部にとどまっている。

11月は「児童虐待防止推進月間」。厚労省が19日に福井市で全国フォーラムを開くなど、各地で催しが開かれた。今年度の推進月間の標語は「さしのべて あなたのその手 いちはやく」。宗教界からも支援の手を差し伸べたい。