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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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高まる排他主義 怨みから和解の道へ

2017年1月1日付 中外日報(社説)

「自国第一」主義を掲げる政治家が各国首脳に選ばれる例が目立つ。そのようなリーダーの人気が高い。自国の利益を尊ぶのはよい。だが、他国民をないがしろにするなら問題だ。自国民を尊ぶことが、他国や他民族、他宗教の人々を軽んじ、排除することと裏腹であってはならない。

欧米諸国でイスラーム教徒を排斥する動きがあるのは大いに懸念される。一部の過激な政治思想を持つイスラーム教徒がテロを起こす。これを防ぐために一般のイスラーム教徒の自由を制限する。それによって差別に苦しむ層が過激派の供給源になる。狭い内輪意識で内部の結束を強め、他を差別する方向は、ますます反発を招く。

「テロとの戦争」の掛け声は9・11以後、15年を越えた。アメリカの中東攻撃は湾岸戦争から数えれば、25年を過ぎる。だが、事態は改善せず、ますます悪化している。暴力の悪い連鎖だ。英国のトニー・ブレア元首相も、米国のイラク攻撃を肯定しそれに加わったことが誤りだったと認めた。

だが、米国のトランプ次期大統領は選挙運動中、「イスラーム教徒の全面入国禁止」を唱えていた。いま米国内で、イスラーム教徒は圧迫を感じている、と報道されている。ヨーロッパ諸国でも排外主義的な勢力が増大しているようだ。キリスト教文明圏とイスラーム文明圏の対立・排除の意識が和らぐ気配はない。

これはキリスト教とイスラームにとどまらない。インドではヒンドゥー教徒とイスラーム教徒の対立が、パレスチナではユダヤ教徒とイスラーム教徒の対立が強まっている。中東ではイスラーム教徒の間でも、スンニ派とシーア派の対立が深刻化している。

では、日本はこうした宗教や文明が関わった対立・排除と無縁だろうか。21世紀に入って日本と中国や韓国の関係は悪化している。日本と中国・韓国の間では、相互をののしるような言説が著しく増大した。宗教を掲げた対立ではないが、民族意識に基づく対立だ。東アジア地域は儒教や仏教、道教や神道が有力な地域だが、それらの宗教伝統が友好平和に貢献できているか、はなはだ心もとない。

『ダンマパダ』には「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない」(『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)とある。言論のレベルにせよ、報復と排除の連鎖は憎しみを増幅するばかりだ。宗教は憎しみと対立を勧めない。和解と友好を教えているはずだ。和解の道へと歩みを進めるこの一年でありたい。