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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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地球温暖化 「将来世代を守れ」の訴え

2017年1月20日付 中外日報(社説)

地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が昨年11月に発効した。2020年から全ての国が温室効果ガスの削減に努力するよう義務付けており、17年はその具体的なルール作りに向けて動きだす年になる。

日本は宗教界も含め気候変動・温暖化対策の取り組みが遅れている。協定の国会承認(批准)が、先頃モロッコで開かれた国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)の開幕に間に合わず、各国の失笑を買った。

言うまでもなく温暖化は海水面の上昇や様々な自然災害の原因となり、難民の発生に伴う「気候戦争」の可能性も論じられるなど全人類的な課題だ。再生可能エネルギーの導入など宗教界が率先して啓発や取り組みを進めてほしい。

協定は平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度未満に保ち、1・5度に抑える努力を求めている。先進国だけに温室効果ガスの削減義務を負わせた京都議定書と違い、締約国全ての「貢献」をうたったことに意義がある。

アメリカのトランプ新大統領は、これまで協定に否定的な発言を繰り返し、温暖化そのものにも懐疑的な目を向けてきた。温暖化の原因が人為的な活動にあることは科学的にほぼ断定され、国際社会の共通認識になっている。協定の形骸化を防ぐためにも米国の関与は不可欠だ。

カトリックのフランシスコ教皇は15年6月、気候変動など環境問題に警鐘を鳴らす回勅「ラウダート・シ」を発表。8月には20カ国のイスラム教指導者が「イスラム気候宣言」を採択するなど、世界の宗教者は温暖化への危機感を強めている。世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会は昨年、宗教者の温暖化対策を促すため特別作業部会「気候変動タスクフォース」を設置した。17年度から植林事業を始める計画だ。

部会は昨年11月に東京で学習会を開いた。講演した山本良一・東京大名誉教授は「環境の危機は倫理の危機。宗教界の出番だ」と述べて宗教者の「良心」を問い、具体的な活動として①国民にダイベストメント(温室効果ガスを生む化石燃料産業からの投資の撤退、資金の引き上げ)を呼び掛ける②再生可能エネルギーによる電力を購入する――の2点を提唱した。

ダイベストメントはハーバード大など欧米の大学で学生や教職員が当局に求めて始まった。日本での動きはまだほとんど見えないが、各国の金融機関や自治体などに広がっている。学生たちの「将来世代を守れ」という訴えを銘記したい。