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天下り教授の背景 学生本位の教育めざせ

2017年2月8日付 中外日報(社説)

こんな筋書きのドラマを見た。殺人事件を捜査する名刑事が、事件の背景に複雑な再就職人事が絡んでいることに気付く。中央省庁の元高官と、大企業の元重役とが、常識では考えられないようなポストに就いていたのだ。

やがてこの2人は、それぞれが天下り人事との批判を避けるために、示し合わせて再就職先を交換していたと分かる。ほとぼりの冷めた頃に本来就くべきだった再就職先に迎えられるというものだ。ドラマになるほどだから、実際には一部の省庁で行われているのかもしれない。

公務員は退職後、在職中に利害関係のあったポストに再就職してはならないと定められている。しかし内閣府の再就職等監視委員会の調査で、文科省の元高等教育局長が、東京の有力私立大教授に再就職していたことが明らかになった。東京大合格を蹴ってでも入学したいという受験生もいる有力大学である。

大学の教育行政をつかさどる局長を経験した人物が大学教授に迎えられたのだから、典型的な天下りである。この人事を進めるために、私立大との間で省ぐるみの折衝が行われたことが分かり、現職の事務次官は辞任し、幹部数人が懲戒処分を受けた。もちろん、私立大へ天下っていた元局長も、教授を辞職した。

不思議でならないのは、この問題をめぐって、学生の立場が論じられなかったことだ。元局長が辞職したのは、1月の中旬である。どんな講座を担当し、どのように教えていたのかは報じられていないが、1年間の授業を締めくくる時期であり、受講の学生は困惑したに違いない。次の学習ステップをどうするか、迷っている学生はいないだろうか。

教育の主体は、学生にある。大都市の大学に進むよう勧められた高校生が「私はあの先生の教えを受けたい」と言い、あえて地方の大学へ進学したとの話も聞く。このような師弟関係が学問の伝統を育み、学術の向上をもたらすのではないか。

政府は、文科省以外の省庁でも天下りの例がないかを厳しく調べるという。ある大臣は記者会見で「私の所管する役所では天下りは行われていない」と胸を張っていたというが、どの省庁にせよ、最初に挙げたドラマのような偽装工作がなければ幸いである。

かつては霞が関の官庁街で「文部省(現文科省)は天下り先に最も恵まれない役所だ」との声を聞いたことがある。全省庁対象の天下り監視体制が“道半ば”に終わらぬことを期待したい。