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『宗教年鑑』の問題 信者数調査集計の意味は

2017年2月10日付 中外日報(社説)

文化庁宗務課の『宗教年鑑』は便利な資料である。信者数など教派別の教勢変化は毎年それほど大きく変化するわけではないが、10年単位なら何らかの傾向を読み取ることもできる。例えば、30年後の年鑑では宗教法人数は大幅に減少していることだろう。

直近の平成27年版には認証事務の年間処理状況報告も収められていて、カルト批判の立場に立つ人々が問題視した統一教会の名称変更などもさりげなく記載されている。長年、正式手続きに至らなかった法人名称変更が認証された事情について、改めて考えさせられた。

ところで、『宗教年鑑』に載せるそれぞれの教団のデータは自己申告で、代表役員名、所在地など登記事項以外の信頼性はどうか、という見方もある。確かに信者数の水増し報告はこれまでも一部で指摘されてきた。年鑑の各宗派・教派の信者数を合わせると日本の総人口の1・5倍以上になるというのはよく知られた話だ。

これを、統計のでたらめさを示すものと非難するか、しばしば指摘されるように、ごく大雑把に見て日本人の重層信仰などを示すものと解釈するかは立場によって違う。宗務行政や宗教そのものに批判的な人は、「でたらめさ」を重視するだろう。そのことから宗教界は信用できない、といった類いの結論を導こうとする例も見られるが、それはちょっと無茶な話だ。

例えば、所属教師数や被包括団体数などは包括法人側が正確に把握している。『宗教年鑑』掲載のデータも実数と理解できる。しかし、信者数となると別の事情がある。そもそも『宗教年鑑』が「信者数」として数える単位は何か。明らかに個人で計上する教団もあれば、世帯単位で文化庁に報告している宗派もある。

檀家・信者を世帯数で集計している宗派は信者を個人数で示すのは不可能だし、行政がそれを要求するわけにはゆかない。『宗教年鑑』がそれぞれの教団のお家の事情を反映したデータをそのまま載せるのは、仕方がないだろう。ただし、無用の誤解を生まない十分な配慮が必要である。個人と世帯を一緒くたにして、仏教系や神道系などの総信者数まではじき出すのはおよそ適切ではない。残念ながら、『宗教年鑑』にはお門違いの議論を生む問題箇所もあると言わざるを得ない。

行政の年鑑だから数字は正確であるべきだが、一方で、国家と宗教の関係から見て、宗派別信者数調査を国が行うのはどうか、という疑問が残る。このことを改めて考えた方がいいのかもしれない。